【記者の目】カジュアル専門店で増えるアウトドア提案 生活の変化に対応

2020/09/12 06:29 更新


 メンズの売り上げ規模の大きいカジュアルチェーン専門店でアウトドアテイストのウェア、関連雑貨の提案を強める動きが目立っている。近年のアウドドアブランドの流行に応じた試みだ。最近は新型コロナウイルスの影響で、自宅や近隣の公園で簡易なアウトドアを楽しむ人が増えており、こうした人々を対象に据えた提案も増えている。これまで取り組み切れていなかった生活提案の一環だ。消費者の変化に対応し、新たな需要を取り込めるか注目だ。

(友森克樹=東京編集部メンズカジュアル専門店担当)

NPB、仕入れの2種類に分かれる

 アウトドア関連商品の提案は、主にNPB型と仕入れ型の2種類に分かれる。

 売り場での打ち出しが早かったのはライトオンだ。18年秋冬から、同社が販売するアウトドアNPB「キャンプセブン」で提案を強化してきた。同ブランドは1971年に米コロラド州ボルダーで誕生。同社が日本のマスターライセンス権を保有し、メンズ、レディス、キッズ商品を販売している。

 18年夏のリブランディング以降、近年のアウドドアブームに乗り、昨秋に取材した当時は大きく売り上げを伸ばしていた。透湿防水素材「シンパテックス」使いのダウン入りマウンテンパーカ(2万4900円)や11月上旬に発売したポリエステルリップストップのグースダウンジャケット(1万9900円)は、計画を上回るペースで売れていた。 

 マックハウスは昨秋から、既存大型店にアウトドアブランドの集積・提案を強めている。昨秋は「ロゴス」「ティーマックアウティング」「ウッズ・カナダ」「シエラデザインズ」などを仕入れ、近年は売り場になかった2万円を超えるアウターなども揃えた。30~40代を中心に、山登りやキャンプを楽しむ年配層にも順調に売れていた。同売り場を見た後に、通常のカジュアルウェア売り場で、より手頃な価格の服を買うなど、相乗効果も生まれていた。 

マックハウスは昨年秋から、大型店にアウトドア関連商品の売り場を導入している

 ジーンズメイトは昨秋、伊藤忠商事と独占フランチャイズ契約及びアパレル商品の製造ライセンス契約を締結している米国ブランド「アウトドアプロダクツ」で、メンズ新レーベル「ブラックライン」を立ち上げた。黒を基調とした機能性カジュアルウェアやバッグを揃え、アーバンアウトドアスタイルを提案している。同ブランドのオンリーショップを中心に新ラインの専用売り場を設けた。今春からは「ジーンズメイト」「JEM」などの業態にも売り場の核として導入。提案をさらに強化している。

新しい生活様式に応じて

 新型コロナウイルスの感染拡大以降に高まっている、自宅や近場の公園でアウトドアを楽しもうという消費行動に応えようとする動きも出てきている。

 コックスは7月から、ECを軸にアウトドア関連商品の販売を強化している。取り扱っているのは、ロゴス、ティーマックアウティング、「スローワー」の3ブランドで、ECでは100品番以上を揃えている。

 7月14~21日にはライフスタイル業態「Lbcウィズライフ」サントムーン柿田川店でアウトドア関連商品を集積・販売するブースを設けた。初の試みでありながら、展示をきっかけにした来店があるなど、好評だったという。今後は主力業態「イッカ」の約50店舗でもテントの販売などを計画している。

7月14~21日に「Lbcウィズライフ」サントムーン柿田川店が設けたアウトドア関連商品の集積コーナー

 ジーンズメイトもミニキャンプ需要をつかむためのVMDを強めている。6月中旬に住友不動産ショッピングシティ有明ガーデンにオープンしたJEMでは、アウトドアプロダクツ・ブラックラインの機能性ウェアとともに、ハンディーファンやペットボトルポーチなどの雑貨を並べた。陳列用としてバーベキューコンロなども置いて、アウトドアのイメージを分かりやすく訴求している。

有明ガーデンに新規出店した「JEM」のアウトドア提案売り場

 ここまでで事例を取り上げた企業はここ数年、業績の低迷が続いている。しかし、大都市に限らず、全国各地の多様な立地に店舗を展開しているという点は、遠方や繁華な街への外出を控えるウィズコロナ時代にあって、一つの強みだと感じる。今こそ各店舗の地元客に自店をアピールする好機。ニーズを捉えた提案ができれば、新規客の獲得や休眠客の呼び戻しにつながるだろう。

友森克樹=東京編集部メンズカジュアル専門店担当

(繊研新聞本紙20年8月3日付)

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