「ザ・ノース・フェイス」強さの秘密㊦

2018/12/24 06:25 更新


【コア&モア 「ザ・ノース・フェイス」強さの秘密㊦】頂上品の販促費を1.5倍に

 売上高500億円を目前に、「ザ・ノース・フェイス」(TNF)は何を目指すのか。さらなる成長余地はあるのか。ゴールドウインの西田明男社長は、「浮かれないようにするだけ。緩んで『売れればいい』というようになると、お客様からは反発される。ブームに乗らない」と答える。森光執行役員も「どんなに規模が大きくなっても、ブランドの信頼度を落とすことはしない」と強調する。

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 TNF事業の重点施策に位置付けるのは、今一度、ブランドの根幹(コア)を磨き上げること。信頼を築く根拠となる部分を、明確にする作業だ。

◆2%へ集中投資

 17年秋物から、TNFの頂上商品「サミットシリーズ」を刷新したのはそのため。テクニカル商品群として誕生したが、その後、独自のロゴマークがブランド内に氾濫(はんらん)し、本来卸すべきアウトドア専門店で扱われなくなっていた。そこで、コアなアクティビティーに特化したラインとしてリニューアルした。ヒマラヤ登頂など過酷な環境下を想定した最上級ラインとし、現役のトップアルピニストらの意見を取り入れながら開発した。

 販路もアウトドア専門店に限定。約70に絞り込んだ店にはサミットシリーズのコーナーを作ってもらい、その世界を消費者に伝わりやすくした。プロモーションも強化した。昨年11月には都内で消費者向けエキシビションを初開催し、テクノロジーを動画やパネルで紹介した。

 実は、TNFに占める同シリーズの売り上げ比率は2%程度に過ぎない。しかも費用を投じたわりに、認知が「なかなか広がらない」(森氏)のが現実だ。それでも強化するのは、「サミットシリーズこそがブランドのフラッグシップモデルであり、DNA」(同)だから。今後は、同シリーズの開発だけでなく、積極的なプロモーションも継続する。同シリーズの宣伝販促費は、今期(19年3月期)、前期より50%増える見込みだ。

 新たな領域(モア)への挑戦も忘れない。今2月には、五輪種目となったスポーツクライミングの協会と公式サプライヤー契約を更新。21年まで、TNFとして、日本代表チームにウェアを供給する。ランニングやトレーニング用品も拡充している。

17年11月のサミットシリーズのエキシビションには2日間で約700人が訪れた

◆安易な参入厳禁

 ただし、新規分野への安易な参入には慎重だ。最近もアスレジャーが注目されたことで、ブランドとしてヨガウェアの扱いを検討したが、市場で求められる水準を鑑みて、いったん取り下げた。森氏は「各分野に競合相手はおり、きちんとできないとお客様の期待を裏切る。『この分野は売れそう』という安直な発想は厳禁」と話す。

(おわり/繊研新聞本紙5月25日付)



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