北陸の染色加工場、テックワン(石川県能美市、竹田忠彦社長)は、環境認証のブルーサインのシステム・パートナーを取得した。世界的にサステイナビリティー(持続可能性)の重要性が増すなか、製造工程や製品の環境配慮を徹底していく。さらに、年間休日を確保した稼働計画を立てるなど、現場スタッフの負担改善にも取り組み、強みの技術力を将来にわたって持続・向上させる。
(中村恵生)
ブルーサインは今年1月に本社工場と辰口工場を対象に契約し、現場の監査や監査報告を受けた後、3年計画の対策を提出して認められた。これによってシステム・パートナーとなり、企業発行物や製品にブルーサインマークの掲示が可能になる。竹田社長は取得の背景について「売り先の8割が海外で、主力はスポーツ。これまで技術力があれば生き残っていけると考えていたが、サステイナブルに対応しなければ残っていけない」と話す。
ブルーサイン取得のため、得意の透湿防水用コーティング、フィルムラミネート加工で発生するVOC(揮発性有機化合物)の回収装置設置も進めている。工場隣接地にスペースを確保し、VOC回収・焼却設備を設ける。このほか、撥水(はっすい)剤の回収・処分の仕組みもスタートした。これまでは染色排水と同様に廃水処理していたが、フッ素系C6タイプなど撥水剤を分別回収し、産業廃棄物として処理する。これら全体で1億数千万円規模の大型投資を実施し、将来にわたって持続可能な染工場としてモデルチェンジしていく。
近年、北陸で顕著な人手不足に対応するため、労働環境の改善も図っている。従来は繁忙期の受注増に対して残業や休日稼働で対応してきたが、今年4月から従業員の休日を確保するために年間の稼働上限を設定し、これを上回る受注は受けない方針に変えた。注文の仕分けも行い、低採算の仕事からの撤退、取引先への工賃値上げを要請し、高付加価値事業への絞り込みを進めている。職場環境も夏場の暑さ対策でスポットクーラーを増やすなど投資を行った。
同時に、小松マテーレ、ハクサン染工と取り組む車両内装材クラスターのような同業間での連携や業種間の垂直連携も強め、互いの強みを生かしたすみ分けや補完を進めていく。また、自社販売事業も強化し、介護・医療向けマット「メディマット」のような既存取引先とバッティングしない分野で新規事業を伸ばす。
同社の今期(19年10月期)業績は売上高が35億円、工賃の改善で経常利益が1億から1億5000万円の見通し。計画に対する稼働率も100%で推移し、自社で製造する透湿防水用の超薄膜無孔フィルム「ルストレSGX‐β」などフィルム事業もけん引する。