《寄稿》河合拓のアパレル業界「新産業論」① アパレル不況の本質は価格

2021/07/13 06:29 更新


 アパレル産業を取り巻く世の中は激変し、現場で陣頭指揮を執っておられる経営者の皆様におかれては、何が正しいのか、どの方向に向かえば良いのか分からなくなっているように思う。思えば、19年の消費増税、暖冬による重衣料の過剰在庫問題、そこに突然襲いかかった新型コロナウイルスによる「巣ごもり消費」。さらに最近では「環境破壊産業第2位」という汚名を着せられ、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、人権問題や政治問題まで突きつけられている。

 このような、二重苦、三重苦の時代の中で求められているのは「新産業論」ともいうべき新しい指針である。本論は、いくつかのトピックに分け「このように考えれば、また、やればうまくいくのではないか」という枠組みの一つを提示したい。もちろん、賢明な読者のご批判の対象にさらされ、建設的に、より洗練されたものに昇華させられることを目的としている。私は評論家ではなく、一緒に最後までやりきる実務家である。建設的な討議・議論の場はいつでも持ちたいし、そのための時間は作るつもりだ。本論考が閉塞(へいそく)感漂うアパレル産業救済の一助になればという思いである。

コロナとの因果関係

 コロナ禍における不況三大業種は、旅行、飲食、アパレルと言われている。しかし、旅行は人が行き交い人流が増加、飲食は飛まつ感染の元であるためコロナウイルスとの関係がイメージしやすい。しかし、アパレル産業がコロナ禍で不況になるという因果関係は不明瞭だ。

 ある人は、コロナ禍により自宅待機の時間が増え、いわゆる「ハレの場」や「オフィス出社」が少なくなり、ファッションで身を飾る必要が少なくなって通勤着が不要になると説明する。確かに私自身、クローゼットのスーツに袖を通したのは、数えるほどしかなく、この2年ほどはテーラードスーツは購入していない。結果、クローゼットのユニクロ比率は増える一方で、用途は自宅の部屋着とワンマイル(近くのコンビニにちょっと買い物にいく)ウェア。家族も同様だ。

 6月に出揃うアパレル決算をみると、前年比で100%を超えているのは、ファーストリテイリング、西松屋チェーン、ワークマンなど。勝っている企業の共通点は「価格」で、それ以外は見えにくい。

 こうした現象を難解に説明し、煙にまく評論家が後を絶たないが、私から言わせれば「安もの勝ち」である。逆に言おう、日本のアパレル商品は高すぎるのだ。

高すぎる小売価格

 海外に行き、一般家庭で人が着ている服の値段を確認してみればわかる。せいぜい単品で2000~3000円だ。夏物に至っては1000円でも高いほうだ。これに対して、日本の多くのアパレル企業が販売する正規の小売価格は平均すると5000円前後。高い商品は1万円を超す。

(ターンアラウンドマネジャー・河合拓)

河合氏


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