「タエ・アシダ」30周年、芦田多恵さんに聞く 「周年」は「試されるとき」

2022/04/26 11:00 更新


代々木第2体育館で見せた22~23年秋冬のショー

 「タエ・アシダ」(芦田多恵)は、92年春夏のコレクションデビューから30周年を迎えた。22年春夏に続き、22~23年秋冬コレクションをアニバーサリーとして発表した芦田に、この節目に思うことを聞いた。

(赤間りか、写真はブランド提供)

偶然ではない

 自分ではそれほど30年を意識してるわけではありません。ですが振り返ると、「周年」は私にとって「試されるとき」になっています。それが偶然ではない気がします。ファッションて何だろう、デザイナーとは、あなたはどう乗り越える?と試されていると。

 30周年はコロナ禍が続く中。また、戦争など世界が混沌(こんとん)とする中で迎えることになりました。コロナで一斉に店が閉まり服が売れなくなったときは、どうにかしなければとすごく考えました。それで突き当たったのは、ファッションは希望だということ。おしゃれする高揚感、これを着るために頑張ろうという気持ち。そのために作り続けなければならない。新しい生活に合わせた三つのブランドを作ることにもなりました。

 2011年の東日本大震災のときに私は学びました。大震災はブランド20周年の年、間近に迫ったコレクションの仕事に集中している日でした。ショーは中止、しばらく糸が切れたような無気力の状態になりましたが、何か目標があれば変わるのではと思い立ち、ランウェーショーのビデオ制作を決めました。これがデジタル化のきっかけにもなりました。完成させるための日程を決めると、社内は生き生きと動き出します。目標を決めて進むと、それが喜びに変わっていきました。

芦田多恵さん

確信芽生える

 私は少しあまのじゃくなところがあるのか、今まで通りというのが好きではありません。これをするべきではないか、と確信が芽生えるときがあります。じっくり考えて来年くらいに、ではなく、今やりたいと。特にコロナ禍でそれがすごく強くなりました。父(故・芦田淳さん)に似ているのかもしれません。父はいつも「何分後にできるの?」という人でしたから。

 メンズを始めたのは、ジュン・アシダの55周年の年(2019年)です。「うちはこういうやり方」とあぐらをかくのではなく、まったく新しいことをしたかった。今回の秋冬はメンズとレディスの服に対するメンタリティーを融合するように作りました。とても面白く、勉強になっています。

 5年、10年のロングタームのビジョンは私自身は持っていません。時代は移り変わっていきますから、5年後は今とは違う価値が生まれているでしょう。ファッションは時代を繊細に感じ取ることに意味があると思います。

 2年前の今頃は、コロナで出社を制限していて、庭に咲く八重桜を皆で見ることができませんでした。今年は忙しくて、ゆっくり眺める時間がありません。でもそれが本当にうれしくてありがたい。幸せを感じています。



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