前回、課題解決の一つとして「消費」の仕組みの変革が必要であり、日本だからこそ形にできる可能性に触れた。
消費の構造で言えば、日本人になじみ深い仕組みや、最新テクノロジーを駆使したメタバース化のDAOの社会でも説明できるが、今回は全く別の観点──日本という国から説明してみたい。
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〝和〟重視に立ち返る
江戸時代以上に、平和な時間が1万4000年も続いた縄文時代には、争いもなく、どちらかと言えば女性上位の世界観があったとされる。もしかすると世界で最も豊かで精神性が高く、誰もが一定レベルで満たされた時代だったのかもしれない。そう思わせる事実が徐々に表れているようだ。この考えを元に、縄文時代の英知には、きっと新しい資本主義社会のヒントが隠れていると感じた。
日本の歴史とアニミズムベースの考え方に触れてみよう。海に囲まれたこの小さな島に、北はオホーツク、南は沖縄付近からたどり着き、争いを起こさず暮らそうと移住を果たした人々の存在がある。彼らのDNAは「Y遺伝子D系統」(縄文系)と言われる(チベットやアジア諸国はD1、D3系統。対して、日本人はほぼ100%がD2系統という)。
沖縄では、ほとんどの人が地域住民との人間同士のつながりを大切にし、昔ながらの行事を深く愛し、村に宿る文化を継承し、孫から孫へと伝え、口頭継承でそうした文化をつなぎとめてきた。村人たちはこの村で暮らす大切な同一民族のため、分かち合い助け合ってきたのだ。
日本の北部にはアイヌ系の文明が残され、森に暮らす熊や鹿、木々も神とされてきた。何らかの命を頂きながら、自然や動物に感謝し畏敬(いけい)の念を払い、人間社会や文明を育んできた歴史がある。
これらのアニミズムベースの考え方は、新たな資本主義社会を迎える上で非常に相性が良い。なぜなら、今必要なのは、人間の利益を追い求め、自然や動物を消費するビジネスではなく、全体の繁栄を意識し、自然環境に配慮したビジネスだからだ。その歴史と、隣同士の和を重んじる文化に立ち返ることは、これまでの資本主義を変える大きな鍵になる。
日本だからできること
日本には、くしくも紀元前660年から続くとされる天皇の存在があり、唯一、原爆を二つ落とされたという、良くも悪くも、様々な歴史を極端に経験してきた国だからこそ、できることがある。
世界でも当然、利益重視だけではない、新しい資本主義社会が生まれつつある。繰り返すが、この転換期は、アニミズムベースの文化を築いてきた日本人には、大きなチャンスだ。逆に言えば、これを逃すと二度と新しい資本主義社会の定義に、日本は関われない可能性もある。
しかし、難しく考える必要はないだろう。それは日本人にとって新しい考え方を覚えることではなく、「記憶の旅」になるはずだから。
(FreewillCEO・トシ・アサバ)
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