上智大学の学生が20年に立ち上げた学生団体「カルテナ」は、インターカレッジ化し今は関東圏の大学生と専門学校生が所属する。衣服の大量廃棄から生じる環境問題を解決するため、不用になった衣服を回収しバッグなどの小物へとアップサイクルして販売するほか、出張授業でエシカル(倫理的な)ファッションを伝えるなど活動の幅を広げている。
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誰もが使えるもの
衣服の回収は期間限定店、駅、学校での回収ボックスや郵送で受け付ける。友人、家族、一般の人から年間約200着を回収するという。
アップサイクル商品は巾着、バッグ、サコッシュ、シュシュ、ポーチやアクセサリーなど。毎月約10点を目標にアップサイクルするが、衣服から衣服にしないのがカルテナのこだわりだ。
「衣服にすると性別やサイズで使用できる人が限られる。流行のデザインも一瞬で、結局無駄になってしまう。誰もが使えるオールジェンダーのアイテムにこだわりたい」と代表の塩谷菜歩さんは話す。
塩谷さんが痛感するのはカルテナの活動は「延命措置である」ということ。衣服を小物にして寿命を延ばすが、その小物が使えなくなった時は廃棄につながってしまう。今年度はアップサイクルした商品が使えなくなった時の〝出口〟を考えるのが目標だ。
塩谷さんは普段、東洋大学で途上国の貧困や経済格差など国際学を学んでいる。過去にチョコレート産業のカカオ農家における児童労働の問題を知り、国際協力に興味を抱いたのがきっかけだ。
自分が見て伝える
大学受験前に、ある本を読みアパレル産業の労働搾取問題やバングラデシュ・ラナプラザの崩落事故を知った。「誰かの犠牲の上に成り立つファッションを楽しんで良いのか」と考えるなか、カルテナを見つけた。「好きなファッションを通して、自分が出来ることをしたい」思いで入った。
昨年夏にバングラデシュに行き、工場やラナプラザ崩落事故の跡地を見学した。現地で見たこと、聞いたことを出張授業で子供たちに伝えている。「学生だから大きなインパクトは難しいかもしれない」が、エシカルファッションを考えるきっかけにしたいと思いを込める。授業を受けた子供たちからは「服を買う時にきちんと考えて選びたい」「周りに伝えようと思う」といった感想をもらった。
団体をまとめる難しさもあるが、ここ1年で入った後輩は積極的だ。気軽に話せる環境を作り、楽しく続けて欲しいと願う。徐々に次の代表に引き継ぎながら、自身の卒業までカルテナをサポートする。
(小坂麻里子)