アジア系への憎悪犯罪に対抗する運動 米ファッション業界で広がる

2021/03/23 06:28 更新


 【ニューヨーク=杉本佳子通信員】アジア人に向けたヘイトクライム(憎悪犯罪)が頻発している米国で、ファッション業界でも「StopAsianHate」のハッシュタグをつけてAAPI(アジア人、アジア系アメリカ人、太平洋諸島系)に対する憎悪犯罪に立ち向かう動きが急速に広がっている。

 発端は3月2日、音声SNSのクラブハウスで、フィリップ・リムとプラバル・グルンを含むグループがアジア人差別について討議するルームを立ち上げたことにさかのぼる。StopAsianHateをスローガンに、アジア系モデルなども参加。討論しながら、クラウドファンディングの「ゴーファンドミー」で運動基金への寄付を呼びかけた。最初の目標額は50万ドルだったが、2、3日で目標額を突破。3月19日現在、目標額を300万ドルに引き上げ、3万人近い人々から200万ドル以上を集めている。H&M10万ドル、ファーフェッチ7万5000ドル、パシフィックサンウェア2万5000ドルなど企業からの寄付もある。

 ケイトスペードは3月19日、アジア系アメリカ人の人権擁護団体「アジアン・アメリカンズ・アドバンシング・ジャスティス」に10万ドルを寄付したと、インスタグラムでStopAsianHateのハッシュタグ付きで投稿した。トリー・バーチは18日、インスタグラムでこのハッシュタグ付きで「どんな人種差別も容認できない」との声明を投稿。アジア系アメリカ人のサポート団体も紹介した。現在、このハッシュタグを付けた投稿は15万に及ぶ。

 アジア系への差別に対抗する動きが急速に広がっている背景には、16日に起きた二つの出来事が影響している。アトランタではマッサージパーラーが銃撃され、殺害された8人のうち6人がアジア人女性だった。また、AAPIへのバッシング被害の報告を呼び掛けている団体「ストップAAPIヘイト」が、昨年3月19日から今年2月28日までに報告された事件件数が3795件に上ったと発表したことだ。あくまでも団体のウェブサイトに報告された件数であり、実際に起きた件数は何倍にもなると予想される。同団体はデータ分析も発表し、女性の被害者は男性の2.3倍に及ぶ。年齢別では0~17歳が12.6%と最も多く、60歳以上も6.2%を占める。事件は全ての州で報告され、仕事場が35.4%と最も多く、公道25.3%、公園9.8%、オンラインでのハラスメントが10.8%だった。



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