変わるスポーツ素材ビジネス㊦ 室内需要でヨガウェア注目

2021/01/11 06:28 更新


 コロナ禍での各国のロックダウン(都市封鎖)や、在宅ワークの広がりで運動不足に悩む生活者が増え、改めてスポーツへの関心も高まっている。代表的なジャンルが室内でも出来るヨガだ。合繊各社は数年前からヨガウェア向けの提案を強めているが、自宅でリラックスできる快適ルームウェア、あるいはワンマイルウェアなどともクロスオーバーした素材提案を強化している。

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屋内だけでなく屋外も

 旭化成アドバンスは強みの薄地織物に加え、ニットに力を入れている。今月のパフォーマンスデイズのオンライン展で注目されたニット2素材はヨガ系を意識したものだ。一つはスムース、もう一つは表スムース・裏ローゲージのクォーターゲージでカジュアルにも使える。いずれもリサイクルポリエステルをメインに、リサイクルスパンデックス「ロイカEF」を組み合わせた。

 東レは快適ストレッチ素材「プライムフレックス」で、海外ヨガブランド向けの実績があるが、一つのジャンルとして本腰を入れる。新たに開発した暑熱対策素材「クールアプリ」でもヨガ向けを意識した。レーヨン複合で、真夏の気候下でもクーリング効果があり、衣服内の蒸れを軽減。さらに機能糸を組み合わせた消臭タイプ、紫外線カットタイプなどのバリエーションを出す。太陽光の遮熱や防透け性に優れた「ボディシェルEX」との使い分けで広げる。

 帝人フロンティアは高バランス素材「デルタ」シリーズを柱に、撥水(はっすい)糸を使った汗処理の「トリプルドライカラット」、汗染み防止「デュアルファイン」、pH(ペーハー)コントロールによる抗菌消臭「エコピュアー」といった機能軸をプラス。汗染み防止のヨガパンツなど引き合いも高まっている。

 加えて同社が注目するのはアスレチック分野だ。スポーツ業界はここ数年、街着を意識したライフスタイル分野が成長してきたが、コロナ禍をきっかけに身体を動かすことが改めて見直されているため。「ジョギング、サイクリング、アウトドア関連はコロナ下でも売れており、商機がある」とし、〝ニューアスレチック〟と定義。デルタの60 ゲージ 、高通気織物「エアーインプレッション」の表撥水・裏吸汗、スウェットパーカでの代替を狙ったパイル構造のトリコット「デルタTL」、超軽量の透湿防水ニット「ファインセル」のポリエステルフィルムをさらに薄膜化して柔らかさを出したものなどを訴求する。

小回り利かせニーズ捕捉

 抗菌・抗ウイルスといった機能軸も注目される。東レは、ユニフォームなど、他の事業部で先行してきた抗菌・抗ウイルス加工のノウハウを取り入れていく。ただし、スポーツで定番の撥水加工との相性などの問題があるため、技術的な課題をクリアし、広げていく。

 クラレトレーディングは小回りの利く自社の原糸開発を生かす。緊急事態宣言が出された今年4月、十字断面糸「スペースマスター」で銀練り込みの抗菌タイプを急きょ開発し、クイックに商品化へこぎつけた。練り込みで耐久性があるのに加え、表面積の大きい十字断面によって高い効果を発揮するため、生地に17、18%混で使うだけでSEKマークの制菌加工赤ラベルに対応できた。

 また、グループの特殊ポリマーを活用した原糸開発も進める。このほど開発した「スパンドール」は糸が芯鞘(さや)構造で芯にポリスチレン系エラストマーを配置、テキスタイル段階で衝撃吸収の効果がある。スポーツシューズ用途で海外ブランドから関心も集め、用途開拓を進める。

(中村恵生)

コロナ禍でヨガウェアや快適ルームウェアのニーズが高まっている


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