春はファッション小売店の新規出店や改装の多い季節。大阪のメンズセレクトショップ2店も今春に改装した。両店のオーナーに改装の狙いや今後の目標について聞いた。
「グラウンドデポ」(南堀江)
アウトドア売り場を設置
スプレッド(飯田祐士代表)が運営するオレンジストリートにあるメンズセレクトショップ「グラウンドデポ」は、3月26日にリニューアルオープンした。広島でセレクトショップ「レフ.」などを運営するエヌの中本健吾代表がプロデュースし、オオノヨシオ建築設計事務所の大野慶雄氏が設計を担当した。1階は従来のアパレルを中心としたセレクトショップで、2階は「都会と自然をつなぐたまり場」をコンセプトに、アウトドアのフィルターを通したライフスタイルセレクトショップへと改めた。
同社は05年にアメリカ村で創業。13年に堀江に2店目を出店、一時は東京にも進出し、屋号の異なる店を複数運営していた。グラウンドデポは16年11月に既存2店を統合し、現在の場所に出店。22年2月までは1階を売り場、2階をイベントスペースとして運営していた。総売り場面積は264平方メートル。
中心客層は20代半ば~30代半ばだが、40代も少なくない。アパレルはドメスティックブランドが中心で、主力は「ネクサスセブン」「ノンネイティブ」「グラフペーパー」「セントマイケル」「C.E」など。セレクトの幅の広さや、新旧問わないジャンルレスな品揃え、それらのミックススタイリングが同店の強みだ。
改装は開業5年という節目を過ぎたことに加え、同世代のオーナーが手掛ける店や周囲の店と差別化する狙いがある。1階のアパレルの売り場は、実験室のような白を基調としており、一見するとストリート系のブランドを扱う店とは感じさせない。凛(りん)とした空間とそこに並ぶ商品とのギャップが面白い。
一方、海外の本格的なアウトドアギアやビンテージのアウトドアウェアなどを揃える2階は、天然素材の床材を敷くなど、ぬくもりのある空間に仕上げた。アウトドアは、飯田さんの趣味であることに加え、同エリアで本格的なアウトドア商材を扱う店が少ないこともある。売り場を設けるにあたり、専門知識のある人材を新たに採用した。
初年度売上高は2億円を目標とする。日本人客や外国人客の来街が非常に多く、同店の売上高もピークだった19年に比べるとやや低い数字ではあるものの、改装を機にコロナ下の停滞感を払拭(ふっしょく)したい考えだ。一新した新店舗で反転攻勢に出る。
「サーフ&テーラー・モート」(難波)
EC好調で移転決意
メンズセレクトショップ「サーフ&テーラー・モート」(堀哲郎代表)は4月3日、なんばパークスから、南海なんば駅の南に伸びる南海電鉄の高架下「エキカン」に移転した。売り場面積は移転前の約4倍の90平方メートルとなり、イベント・撮影スペースも併設している。増床したとはいえ、過度に売上高を追求するのではなく、広々とした空間で堀代表の思う「楽しいコト」を仕掛け、店の独自性や魅力を高める。
アメカジブランドや個店、オーダースーツ専門店で働いた経験のある堀代表が14年に開業した店だ。「キャプテンサンシャイン」「M.I.D.A」など国内外ブランドのオーセンティックなカジュアルウェアとパターンオーダーのドレスウェアのほか、オリジナルや古着のジーンズも揃えるユニークな品揃えだ。増床により、これまでは店頭で見せきれていなかった商品も十分に陳列できるようになった。客層は30代後半~40代が中心で、50代も多い。客単価は2万~2万5000円。
コロナ禍の直前からウェブマーケティングやECに力を入れてきた。コロナ下もEC中心にぐんぐんと売り上げが伸び、直近のEC比率は約7割に。在庫を置いたり、商品・着用画像を撮影するスペース上の問題も生じてきたことから、より広い物件への移転を決めた。「家賃を抑えられる郊外への移転も検討したが、まだまだ商業の中心地で勝負したい」(堀代表)と考えた。
好調なECは、梱包(こんぽう)にこだわっていることもあってか、購買客の半分がリピーターであるほか、実店舗に訪れたことのない客も多いなど、ロイヤリティーが高い。体形を把握している顧客から注文があった際にサイズ変更をした方が良いと思った場合は、わざわざ電話をかけて変更を勧めるなど丁寧な接客で信頼を得ている。
移転前は定休日がなかったが、今後は火曜日と水曜日を定休日とし、インスタグラムやユーチューブなどのコンテンツ制作に力を入れる。アーティストや取り扱いブランドに関連したイベントの開催を検討しているほか、オリジナル商品も拡充する考えだ。生産現場などに積極的に足を運び、「原料段階からオリジナルの商品を開発することが目標」(同)という。
(繊研新聞本紙22年4月14日付)