【専門店】店舗空間にこだわる専門店 内装などで特別感、売り上げ伸ばす

2022/10/11 06:28 更新


 ヒト(接客力)やモノ(品揃え)だけでなく、器(空間)という要素でもお客を楽しませることを重視したショップが売り上げを伸ばしている。内装にとことんこだわったり、物件選びから個性的なアプローチをすることで、個性を際立たせ、遠方からも集客している。ECが広がった中、実店舗という空間で特別感を追求することは、重要性を増している。

セレクトショップ「アイン」本店 

こだわりの空間で魅了、増収続ける

 大阪・難波の隠れ家的な立地にあるセレクトショップ「アイン」本店は、アユラ(大阪市)が06年にオープンした。2階にオープンしたが、08年に1階も開設し、2フロアの路面店になった。「ヴェットモン」「バレンシアガ」「ロエベ」など高感度なセレクトを、迫力のある店舗空間で打ち出し、コロナ下でも売り上げを伸ばし続けている。

 大きなガラス張りの店内をくぐった1階は奇岩群からインスパイアされ、岩に囲まれた地下をイメージした内装になっている。コンクリートを手作業でエイジング加工して表現した岩を、壁はもちろん、柱のない空間にも大胆に配置し、雰囲気にこだわった。

岩に囲まれた地下をイメージした空間になっているアイン本店の1階
コンクリートをエイジング加工し、迫力のある空間を演出

 什器も大半がオリジナルだ。天井にある柵からチェーンでつり下げたハンガーラックは、独自性があるだけでなく、可動させてレイアウトを変えやすいものにもなっている。定期的に什器を動かし、鮮度のある見せ方を心掛けている。フィッティングルームやトイレも隠し部屋に入るようなレイアウトや凝った内装にしてあり、お客を驚かせている。

可動してアレンジもしやすい柵やチェーンを使ったハンガーラック

 店舗空間にこだわる理由は、仮に他店と同じブランドや商品を扱う場合であっても、特別な見せ方ができるから。「ありがたいことにインバウンド(訪日外国人)を含め、内装を高く評価してくれるお客様も少なくない」(高木めぐみディレクター)。

 扱いブランドの中には、店の内装イメージへのこだわりを強くアピールしたことで、取引がスタートしたものもある。マーケット全体ではコロナ禍も引き金になってECが広がった。同店もECが徐々に伸びてはいるが、あくまで実店舗という空間でリアルに見せる・伝える作業を重視している。

迫力のある見せ方になった22~23年秋冬ダウン

 客層は男性が多く、30~50代が中心。50~60ブランドを扱い、ブランドによっては国内直営店にはない、とんがった商品もあるセレクト力も強みに、関西圏だけでなく名古屋や東京、熊本など遠方からの来店もある。平均客単価は15万円。

 コロナ禍になってからも売り上げを伸ばし続けており、22年7月期も増収ペースで推移している。20年11月にオープンした心斎橋パルコ店も売り上げは初年度を上回った。こちらは若年層や女性の客層を多くつかんでいる。

古着ショップ「白商店」

築100年の邸宅活用、遠方からも集客

 大阪・豊中市にある古着ショップ「白(つくも)商店」は、築100年以上の邸宅を路面店として活用している。古着小売り・卸のチャッピー(大阪市)が21年2月にオープンしたもので、個性的な店作りをSNSで知り、遠方からわざわざやって来るお客も目立つ。

 同社は大阪・アメリカ村で古着店「チャッピー」などを運営。新規出店を計画していた際、古い邸宅の物件があることを知り、「面白い店作りができそう」と考えて白商店の出店を決めた。約530平方メートルの敷地と330平方メートルの建物を活用し、独自の店作りを繰り出した。

白商店の外観。好天の日は屋外にも服を置く

 店内は、男女向けにセレクトした欧米古やユーズド服飾雑貨、デッドストックなどを品揃えした「タイアン」をはじめ、ユーズド子供服の「つくもきっず」、ユーズド雑貨の「ムダガムダ」で構成。それに加え、2階に期間限定店スペースを用意してイベントも仕掛けている。

応接間だった部屋にあるユーズド子供服のつくもきっず

 店内には長年使われた家具などが置いてあり、100年以上経た空間の中で、商品を個性的に見せている。部屋が複数ある間取りも生かし、様々な見せ方でアプローチする。さらに「商品はほぼ毎日どこかを入れ替えていて、鮮度のある売り場を心掛けている」(原田雄麻店長)。

服を一つひとつじっくり見られる陳列にしてある

 庭園にはウッドデッキがあり、中央に大きな鏡を置いている。「この鏡の前で、気に入った服をうれしそうに合わせるお客様も多い」。天気の良い日は庭園にお薦めの服も絞って並べ、服を楽しんでもらっている。

2階から庭を見下ろしたところ。中央に大型の鏡がある

 客層は20代後半~30代前半が多く、男女比率はほぼ半分ずつ。地元の北摂エリアからの来店が多いが、大阪市内からも増えている。SNSをきっかけに東京や福岡からやって来る人もいる。

 売れ行きは初年度を上回り続けていて、「そろそろ目標としていた勢いに届きそう」と言う。平均客単価は1万2000~1万3000円。

 22年8月には、期間限定店スペースで、喫茶のできるイベントを新たに実施した。「店内でゆっくりしたい」と言う顧客の声が多かったため、サンドイッチや創作中華菓子の店に出店してもらう形で実現したところ、とても好評だった。今後も「物販だけでなく、定期的にこうした機会を仕掛けていきたい」と話す。

(繊研新聞本紙22年9月1日付)

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