【連載】スパンデックス 世界の攻防(上)

2017/12/10 04:30 更新


 スパンデックスの世界トップの「ライクラ」がインビスタから、山東如意に売却されることになった。スポーツウェアやジーンズ、パンストなどストレッチ製品に欠かせないスパンデックスは、中国をはじめとする新興国での需要が急速に伸び、市場拡大が続いてきた。

 一方で、韓国・暁星や中国企業による大型増設が相次ぎ、需給バランスが崩れて価格が下落する不安定な状況もつきまとう。その中でトップブランドのライクラや旭化成「ロイカ」は高い品質や機能、ブランド力で高値を維持してきた。世界を驚かせた山東如意による巨額の買収劇は、成長市場を勝ち抜く攻めの一手となるか。

(中村恵生)

 インビスタのライクラ事業は、自社で原料から一貫生産し、米国、英国、ブラジル、シンガポール、中国、日本(東レ・オペロンテックス)に原糸工場を持つ。グローバルな供給体制と、様々な広告手法を活用した積極的なマーケティングで抜群の知名度を持ち、有力アパレルや小売り・SPA(製造小売業)に食い込んでいる。

市場の成長性


 ライクラを核に全世界3000人を抱えるインビスタのアパレル&アドバンストテキスタイル事業は、来年中ごろをめどに山東如意傘下に完全移行する。山東如意が、数千億円と言われる巨額の買収に踏み切ったのは、スパンデックス市場の成長性とライクラの高いブランド力を狙ってのことと思われる。

 スパンデックスの生産能力は、00年代以降、急速に拡大してきた。全世界の3分の2を占める中国のスパンデックス生産量は、07年に14万6000トンだったのが16年に53万3000トンと、10年余りで4倍近い伸びとなった。しかし需要増に先行して大量の設備投資が行われた結果、供給過多による値崩れと需給調整が何度も繰り返されてきた。

 直近も、「中国のスパンデックス市場はこの2年ほど価格が落ち込み、地場の多くのメーカーがコスト負担に苦しんでいる」(インビスタアパレルで東部地域を担当するジュリアン・ボーン上席副社長)状況。その中でライクラは中国で「過去10年間で最も伸びている」といい、供給過剰な市場を勝ち抜いている希少なブランドだ。

体力勝負と一線

 今後も中国を中心に複数の企業でスパンデックスの大型増設が計画され、地場メーカーがひしめくボリュームゾーンでは、価格低下と商圏の獲得競争で体力勝負を余儀なくされる見通し。一方で、こことは一線を画す上級品の市場では、可染性や水着用途で重要になる耐塩素性といった機能、用途に応じた優れたストレッチ特性などで、ライクラやロイカといった有力ブランドが健闘している。

 その旭化成のロイカも、アジアを軸に拡大投資を続けている。同社の米工場は13年に撤退したが、需要旺盛なタイや中国、ドイツで増設し、台湾も増設が検討課題になっている。




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