H2Oリテイリングの新子会社 百貨店を苗床に新事業創出

2019/01/04 06:28 更新


 エイチ・ツー・オーリテイリングが、完全子会社の新会社スークカンパニー(大阪)を立ち上げて百貨店事業から派生した新たな事業を開始している。新会社は、阪急うめだ本店10階の「うめだスーク」を運営している阪急阪神百貨店の阪急うめだ本店趣味雑貨営業統括部が培ってきたネットワークやイベントプロデュースなどのノウハウを活用した事業を行う。既にキャラクターブランドのグッズ開発やオンラインストアなどを開始している。このほか、イベント事業の外販やコンサルティングなど多様な依頼が舞い込んでいるという。

(吉田勧)

3000人の人脈

 スークカンパニーは、①ODM(相手先ブランドによる設計・生産)商品の企画製造卸売り②オリジナル商品の卸売り③イベントプロデュース④ウェブマガジン&オンラインストア「SOUQZINE」(スークジン)の運営⑤ショップ運営⑥コンサルティングの六つの事業を手掛ける計画だ。

 これらの事業の基になっているのが12年から、うめだスークや9階祝祭広場で積み上げてきた実績。うめだスークの中央街区では年間を通して期間限定ショップを開設している。今秋、東京以外で初めて開いた、ほぼ日主催の「生活のたのしみ展」のほか、「文具の博覧会」「クラフト作家商店街」などの祝祭広場でのイベントの企画・運営も趣味雑貨営業統括部が手掛けたもの。

 北街区の「スーク文具店」「スーク暮らしのアトリエ」、南街区の「セッセ」「スーククローゼット」といった常設の自主編集売り場でもイベントを開いている。年間約1000回のイベントを実施しており、作家やクリエイターを中心に3000人とのネットワークを構築してきた。

六つ程度の期間限定店を年中展開している「うめだスーク」の中央街区

50億円に拡大

 うめだスークの来店客数は10階という上層階にもかかわらず年間360万人。年間売上高も、趣味雑貨営業統括部管轄の祝祭広場でのイベントを含め、13年度の約30億円から17年度は50億円強へと拡大している。イベントの企画立案から運営、自主編集売り場の運営、阪急限定商品ほかオリジナル商品の開発・販売など「自己充足」マーケットを対象に、多様な業務の経験値を高めてきた実績が新会社設立につながった。

 消費者を対象にした、うめだスークなどの運営(小売業)は趣味雑貨営業統括部が担う。スークカンパニーは培ってきた資産を活用して、他社への外販などBtoB(企業間取引)事業に取り組む。キャラクターのブランディング、商業施設パブリックスペースのコンサルティング、オリジナルパッケージイベントの外部での実施などの事業を進めている。様々な事業展開が可能とみているが、当面は「企画製造卸に軸足を置きたい」としている。

 エイチ・ツー・オーリテイリングは、セミセルフ型コスメセレクト店「フルーツギャザリング」を運営するエフ・ジー・ジェイ(東京)、婦人服企画・製造・販売のエイチ・ディ・ベースモード(大阪)など百貨店から派生した事業会社を立ち上げており、4月に設立したスークカンパニーもその一つになる。

南街区の「セッセ」では期間限定販売だけでなく多彩なワークショップも実施

「自己充足」の市場性に期待

 宇野新治スークカンパニー社長兼阪急阪神百貨店阪急うめだ本店趣味雑貨営業統括部ゼネラルマネージャー

 エンターテインメント型ショッピング空間の10階うめだスークや、コトを通じてモノを売ることをテーマとする9階祝祭広場は、買い物の楽しさを演出する新しい価値の提供に取り組んできました。見たこともないモノ、会ったことのない人といった未知との出会いがそれであり、独立クリエイターやキュレーター、作家など、作品を手掛けた本人が直接売るということを重視して取り組んできました。

 自分の作りたい物を作るために独立し、自己実現している作り手は多い。一方で、ブランド名を見ずに素材やデザインを見て購入する目の肥えた人たちも20~70代まで幅広くいて、これらの作品を共感消費しています。こうした自己充足を求めている人たちをマッチングすることの市場性はあるとみています。

 例えば、著名キャラクターブランドからの依頼で、服、アクサセリー、バッグ、陶器などの大量生産型ではないハンドメイドやクラフト商品を製作したのも、その表れでしょう。

 イベントの企画は、各バイヤーの立候補制でやりたいことを具現化してきました。また、小売業として着地(結果)を踏まえて取り組んできたことも強みと見ています。阪急本店を〝苗床〟に、BtoBの事業を進めていきます。当面はODMやオリジナル商品の企画製造卸に軸足を置きたいと考えています。



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