7月から、世界屈指のコマースプラットフォームを提供するShopifyがトークイベント「Shopify Partners ロードショー: Scale your commerce with Shopify」のSeason2を開催中です。
「すべての人に、より良いコマース体験を」のミッションのもと、世界トップクラスのコマースサービスを提供してきたShopifyが、パートナー企業&そのマーチャントをフィーチャーし、課題解決やShopify導入のプロセスについて掘り下げていく全4回のトークセッション企画です。今回はSeason2の1回目に開催したイベントのレポートをお届けします。
アパレルやアウトドア企業のEC責任者の方から、既存のECプラットフォームに課題を感じている方、D2Cビジネスを展開されている方にとって、自社の課題解決に役立つ情報が満載となっております。ぜひ本レポートをご活用ください。
【Season2第1回】Shopify Checkout ExtensibilityでCVRを劇的に向上させる!効果的なKPI設定と成功事例セミナー(2024年7月18日)
<セッション1> 「ストレスフリーな購入体験を実現するサイト改善を徹底解剖〜ユーザー視点で改善する良質なEC体験とは〜」:登壇者/モデラート株式会社 マーケティング部 取締役CMO 馬 理恵 氏/株式会社フルバランス 代表取締役 原田 真緒
セッション1では、D2Cファッションブランド「SOÉJU(ソージュ)」などを展開するモデラート株式会社より、取締役CMOの馬理恵さんが登壇。株式会社フルバランス代表取締役の原田真緒さんと、ユーザーのストレスフリーな購入体験を実現するサイト改善について議論した。
モデラート株式会社は創業10年のスタートアップで、大人の女性のシルエットを美しく演出するオリジナルブランド「SOÉJU」が人気だ。同ブランドでは2018年のローンチから一貫してEC直販のみという形態で、当初からShopify を活用。20年にはShopify Plusへとアップグレードし、右肩上がりの成長を実現している。その鍵となるのが、ユーザーのニーズに寄り添った購入体験の提供だ。
「当社のECサイトは誰もが見やすいユニバーサルデザインを前提としつつ、EC直販だからこそ、お客様が知りたい情報を多く盛り込んでいます。リアルな着用感をお伝えするために、モデルの写真だけでなくさまざまな身長体型のスタッフの着画や、生地の拡大写真を掲載するなど、商品の質感を想像しやすい工夫を取り入れています」(馬さん)
年に一度はロイヤルティの高い顧客にアンケートを行い、そこで寄せられた具体的な意見を機能として反映させることもあるという。またチェックアウトの画面では、顧客単価を高めるクロスセル導線を意識しつつも「オートレコメンドに頼りすぎない」ことを重視。アパレルのマーケティング経験則に基づき、顧客満足度を高めるような組み合わせを提案している。
ほかにもハッシュタグによる絞り込み機能や、商品の一覧画面からカラーごとに画像を切り替えてカラーバリエーションを確認できる仕様など、ユーザーの商品選択をより効率的にする工夫が随所に。「UIは日々、試行錯誤をしている」と馬さん。「あまり自分たちで抱えすぎず、やりたいことはなるべく外部委託も含めてフットワーク軽く実装していきたい」と語った。
これを受けてフルバランスの原田さんは「ノーコードで簡単にできる点は自社で、複雑な部分は外部に出すことで、より効率的な開発ができる」とコメント。UI改善のためには、コストバランスを見ながら開発アプリをうまく活用することも大切だという。ユーザーにとって利便性の高いECサイトを運営するカギは、細部へのこだわりを理解し、スピーディに対応してくれるShopify のパートナー。ぜひ上手に活用してほしい。
<セッション2>「事業計画から導く効果的なKPI設定と成功事例〜サイト改修とマーケティング最適化でEC運営を最適化する〜」:登壇者/新富士バーナー株式会社 営業部 窪田 礼 氏/株式会社フルバランス 執行役員 中西 健輔
セッション2ではまず、株式会社フルバランスの中西健輔さんが、Excelを用いたKPI改善のシミュレーションについて説明。その後、アウトドア用ランタンやバーナー、着火器具、工業用バーナーなどを製造する新富士バーナー株式会社の窪田礼さんとともに、具体的なマーケティング事例についてディスカッションを行った。
中西さんによれば、Shopifyには多くのアプリケーションがあり「どれを入れたらよいか分からない」と悩むクライアントも多い。無駄のない投資で効率的にビジネスを成長させるには、KPIに基づいた施策を計画し、実行に落とし込むためのシミュレーションフォーマットが欠かせないという。
フルバランスでは独自のフォーマットを用い、目標売上とそれを構成する要素(流入率、購入率、客単価など)を分解。そのうえで改善すべきKPIを明確化し、目標達成のために必要な施策を行った場合の売上予測をExcelでシミュレーションできるようになっている。たとえば「レビュー機能の追加」によって「カート投入率」が◯%改善すると、売上が◯%アップし、目標達成率が◯%になるというように、同社の知見に基づいた具体的な予測が可能だ。具体的なシミュレーションによって、次の一手を効率的に選ぶことができるという。
セッションの後半では新富士バーナー株式会社の窪田礼さんが加わり、会場からの質問に答える形で具体的な施策について語った。
新富士バーナーではコロナ禍でアウトドア需要が増加したことをきっかけに、自社ECサイトを強化。当初は予測が難しく、施策が効果を発揮するか不安もあったが、他社の成功事例を参考にしつつ進めていった。そんな久保田さんが実感しているのが、データの蓄積とシミュレーションの重要性だ。
「EC運営では、改善したい課題があっても年間予算があらかじめ決まっているために、やりくりが難しい面があります。当社も最初はそうでしたが、Shopifyによる運用で徐々にデータが蓄積されていったことで『昨年の同じ時期にもっと予算を充てていればどんな数字になったのか』といった根拠から、『今ここに投資をすると◯%伸びる』など具体的な提案が可能になってきました」(久保田さん)
会場からは「コロナ禍など、不測の事態でシミュレーションが効かない場合の対策は」という質問が寄せられた。久保田さんは「アウトドア業界は季節によって売上が大きく変動するが、コロナ後は年間を通してキャンプや山登りなどを楽しむ方が増えており、売れない時期でもファンづくりや製品のメンテナンス提案を行って持ちこたえた」と回答。
また別の参加者からは、「たとえば毎月20通出しているDMを1通に減らすことで、短期的には数字がマイナスになっても、長期的にはユーザーの満足度が上がる可能性もある。このような抜本的な方針変更について、社内で意見を通すにはどんなコミュニケーションが必要か」との質問があった。
久保田さんは「大きな変更を社内で通すためには、積み上げ型の改善やデータに基づく試行錯誤を繰り返し、実績を示すことが重要」と回答。「自分は社内コミュニケーションを円滑にするために、関わる人に普段から声をかけ、現状をそれとなく報告するタイミングを作っている。意識して社内の味方を増やしていくことが大切」とアドバイスした。
最後にKPI管理について「Shopifyをカスタマイズすることで、今回説明していただいたシミュレーションシートよりも簡易的なダッシュボードを作れないか」との質問には、中西さんからShopifyのデータをインポート、エクスポートできるアプリ「Matrixify」などの紹介があった。Shopifyでのデータ管理にMatrixifyやShopifyのAPIを利用し、データをGoogleスプレッドシートに自動で入力して、広告やアナリティクスのデータを一元管理することは可能だという。
さらに中西さんは「もう少し開発コストを抑えるならば、『TROCCO』というデータコネクターサービスもある。こちらはGoogle広告、Meta広告など複数のデータソースを1つにまとめて分析できるので、まずは無料版から活用してみては」とのアドバイスを寄せた。
※Season2のイベントレポートも随時更新します。詳しくはこちらから。
お問い合わせ先
Shopify Japan株式会社 パートナーマーケティング
担当者:佐野
Mail:roadshow-partner-mktg@shopify.com
企画・制作=繊研新聞社業務局