3月~6月にかけて、世界屈指のコマースプラットフォームを提供するShopifyはトークイベント「Shopify Partners ロードショー: Scale your commerce with Shopify」を開催致しました。
「すべての人に、より良いコマース体験を」のミッションのもと、世界トップクラスのコマースサービスを提供してきたShopifyがパートナー企業と、そのマーチャントをフィーチャーし、課題解決やShopify導入のプロセスについて掘り下げていく全4回のイベントです。
D2Cブランドの成功を志している方や、ブランド運営の最適化を図りたいマーケティング担当者の方、消費財・ファッションのECを運営する方々へ向けて、今回はシリーズ1の2回目の開催レポートになります。ぜひビジネスの成長にお役立てください。
7月18日より、新シリーズ「Shopify Partners ロードショー Season2」がスタート。こちらもお見逃しなく!
【第2回】SUNTORY、LÝFT登壇!ブランド立ち上げ、20億円の壁を突破するにはなぜShopify Plusが必要なのか?(2024年4月23日)
<セッション1>「数多くのD2CブランドをリリースしたサントリーD2C Studioが明かす ブランドリリースに Shopify "Plus" を採用すべき理由 」:登壇者/サントリーホールディングス株式会社 デジタル本部 DX戦略部 部長 下野 晋平 氏、AnyMind Japan株式会社 DX・AI事業部 Senior Manager 伊礼 大夏志
セッション1では、数多くのD2Cブランドを立ち上げ、今後も新たなブランドを計画しているサントリーホールディングス株式会社から、デジタル本部の下野晋平さんが登壇。
サントリーは有名な「やってみなはれ」の企業理念で、これまでに多くのヒット商品を生み出してきた。しかしその背景には膨大な数の失敗がある。下野さんは、サントリーが過去に発売したもののヒットには至らなかったケースを紹介しつつ、「失敗を恐れず勝つまでやれ」という企業文化のおかげで、一部の歴史に残るヒット商品が生まれるとした。
「欲しいものを事前に『欲しい』と言ってくれるお客様は、実はとても少ない。多くは目の前に新しい商品が出てきて初めて『こういうものが欲しかった』と言ってくれるのが、お客様というもの」(下野さん)
だからこそ製品開発イノベーションの際には、有名なエジソンの「必要は発明の母」ではなく、「発明は必要の母」という心構えが大切だという。エジソンの蓄音機は当初、音を録音できる機械ということで「遺言を録音する」「語学の教材として使う」などの目的のために売り出された。しかし全く売れず、同じものをジュークボックスとして販売したところ爆発的ヒットにつながったという。「技術的に優位性がある製品を、お客さんを変えてピボットすることがヒットにつながる」と下野さん。
そのためには大量に製品を生み出し、多くの消費者の反応を見ること、いわば大量に“実験”しなければならない。同社ではここ数年、新たな取り組みとしてマーケティングから販売、顧客サポートまで一気通貫で手掛けるD2Cブランドの立ち上げを進めている。社内に「D2Cスタジオ」を設立し、Shopifyを活用して短期間で30ブランドを立ち上げた。
サントリーでは当初からAnyMind Japanの支援を受け、Shopify Plusを採用。複数の関係者が並行して作業できる環境を整備してきた。Shopify Plusではストアを10個まで作成でき、デザイナーや技術者、構築パートナーごとにサンドボックス環境を用意することができる。最終的にこれらを1つに統合し、大規模な開発をパラレルで行えるのが利点だ。
CVR(コンバージョンレート)を向上させるため、Shopify Plusならではのチェックアウトページのカスタマイズ機能も活用。大企業に要求される高度なリーガルチェックも、Shopify Plusならクリアできるという。
またマルチパスAPIを使うことで、ソーシャルログインも可能だ。各SNSからログインができれば顧客の利便性は向上し、離脱率も下がる。さらにはサントリーの独自IDとの連携も行い、30あるブランドの顧客を横につなげる取り組みも進めている。AnyMind Japanの伊礼さんからは「ソーシャルログインだけでは、そのSNSのサービスが終了するとお客様がログインできなくなってしまう。企業の独自IDがあれば、そのリスクも減らせる」と説明した。
<Q&A>当初は「全員が何でもやる」スタンスで、D2C運営への理解を深める
質疑応答ではサントリーのD2Cブランド戦略について、「当初は何名くらいのメンバーで立ち上げたのか」との質問が寄せられた。下野さんからは「組織でいうと、初期コアメンバーは30ブランドで約5名。当初は“全員が何でも全部やる”スタンスだった。はじめから役割を設計してもうまくいかないことが多く、全部やって、整い出してから規定した方が、1人ひとりの業務に対する理解も深まる」という。
D2Cスタジオが発足して2~3年経ってからは、1つのブランドにつきCRM、SNS担当、技術運用者や分析、ブランドの統括者、デジタル広告の統括者など14の役割を設け、それぞれに担当者を当てはめているという。
またShopify Plusでは、デザイナーや技術者など構築パートナーごとに制作したサイトを1つに集約できるが、そのメリットを尋ねられ、AnyMind Japanの伊礼さんは「いちばんのメリットは、バッティングしにくいこと」と回答した。「例えばサイトのクリエイティブを広告代理店に依頼するケースも多いがその場合、クリエイティブのこだわりと、サイトの技術的な側面(配送機能や日時指定、ポップアップの出し方など)を最終的にマージすると、デザインが崩れたり予期せぬ挙動が起きたりする。Shopify Plusなら各パートナーが好きに開発しても不具合が起きづらく、最初の要件定義が大きく減るのがメリット」という。
<セッション2>「D2CフィットネスブランドLÝFTと越境EC運営のプロが徹底討論! 国内外で急成長する人気ブランドの育成法」:登壇者/株式会社LÝFT 事業責任者 國井 恭志 氏/AnyMind Japan株式会社AnyLogi事業責任者 久保 銘中
セッション2では、売上20億円を超えるD2Cフィットネスブランド「LÝFT(リフト)」のCOO國井 恭志さんが登壇した。「LÝFT」は2018年、ボディビル界の著名人でインフルエンサーのエドワード加藤さんと、WEBデザイン・広告・グラフィック制作やアパレルECに明るい國井さんが2人で立ち上げた。フィットネスライフスタイルブランドとして数多くの商品を展開し、ファッションとボディメイクの親和性を打ち出す。2020年にはサプリメント市場に参入。2021年には表参道にフラッグシップストア、2023年には表参道ヒルズに「LÝFT GÝM」をオープンし、海外展開も見据える。
ブランドをスタートした2018年は、すでに多くのインフルエンサーがアパレルブランドを展開していた時期だ。競合も多いなか、プラットフォームにShopifyを選んだのは「感覚値で操作できそうだったから」。豊富なテンプレートや、コーディング不要で組み替えが自由にできる点などがShopifyの魅力だという。
月販3000万円までは國井さんが1人で対応し、2021年にShopify Plusに切り替えた。実店舗のオープンや、当初のメンズに加えてウィメンズのアパレルも販売開始するタイミングだった。「ある程度の売り上げが見込めれば、Shopify Plusの方が手数料も得になる。早い段階からグローバル展開を見据えていたことも、越境ECに強いShopify Plusを選んだ理由のひとつ」と國井さん。その後はLINEとも連携できる体制を整え、現在はLINE公式アカウントには7万人の登録がある。ブロック率も低く、会員数は伸び続けている。
今後の課題はオフラインとオンラインの連携と國井さん。「POSとの連携を進め、さらなる顧客情報の把握や、効率的な在庫管理を進めたい」。
<Q&A>リピート率60%を誇るアパレルブランドを運営する秘訣は、顧客との地道なコミュニケーション
質疑応答では「多くの顧客を獲得し続けているマーケティング戦略は?」との質問が出た。國井さんは「小手先のテクニックに頼らないことが大切」とし、「常にお客様を大切にし、1人でも多くのファンと交流して心をつないでいくような形で、評価を積み上げていく。アパレルの商品に関しても1つひとつ丁寧に作り、どうすればよりよく見せられるかを考え抜き、地道な活動をやってきた。ちょっと華やかに見えるのですが、割と泥臭いです」と振り返る。そのためにブランドのビジョンを共有できるメンバーとチームを組み、なるべく外部委託に頼りすぎない組織づくりを心がけている。
またLINEを通した顧客情報の把握についての質問に、「オンラインとオフラインの連携をより進めていくが、集計を取りたいからといって、お客様の手間を増やすことは考えていない」。「LINE公式アカウントの配信は月1~2回の必要最低限で、しっかり見ていただけるように工夫する。無理にお客様の登録を促すことはしない、スタンスを意識している」という。
※Season1の3回目以降のイベントレポートも随時更新します。詳しくはこちらから。
お問い合わせ先
Shopify Japan株式会社 パートナーマーケティング
担当者:佐野
Mail:roadshow-partner-mktg@shopify.com
企画・制作=繊研新聞社業務局