静岡市 ‟日本一のプレミアムフライデー″

2017/08/23 04:20 更新


 月末の金曜日は仕事を早めに切り上げて、旅行やカルチャー、買い物など豊かな時間を過ごそうと始まったプレミアムフライデー(プレ金)。消費喚起に期待も高まったが、全国的にはいま一つ盛り上がりに欠けるとの声もあがる。だが静岡市では、「日本一のプレ金」を自負し、オール静岡の取り組みで毎月のプレ金を盛り上げている。月ごとのテーマに沿ったシンボルイベントに、商店街の街ゼミや歳時の打ち出しが加わり、街全体がプレ金に染まる。

 3回目のプレ金となった4月28日、静岡市役所前の葵スクエアには23社から131人の新入社員が集まった。この日のプレ金のテーマは「新入社員を歓迎しよう」。静岡市の田辺信宏市長、静岡商工会議所の酒井公夫会頭が新入社員一人ひとりと名刺交換し、励ましの声をかけた。それぞれのテーブルでは、新入社員同士の名刺交換も。プレ金を、行政、企業トップとの交流や、異業種交流につなげた。5月のプレ金はメインのイベント会場を静岡市清水区に移し、「〝まちは劇場〟を楽しもう」をテーマに、コンサートを開催。こうしたメインイベントは、毎月テーマを決め実施している。

 盛り上がりはシンボルイベントの周辺だけではない。商店街の個々の店が、講習会を開く。刃物を扱う店なら包丁の研ぎ方、花屋では生花を長持ちさせる方法といった具合に、その店ならではの技を店先で披露する。静岡の中心商店街にはこうした「街ゼミ」の伝統がある。プレ金には「店先にワゴンではなく椅子を並べて欲しい」(酒井公夫静岡市プレミアムフライデー官民推進協議会会長=静岡商工会議所会頭)との呼びかけで、街ゼミをプレ金に合わせて実施するようになった。

 企業も協賛し、月末金曜日の早期退社を支援する。商工会議所は会員企業から、「プレミアムフライデー実施協力企業宣言書」を募り、取り組みを各社で記入してもらっている。取り組みは実態に合わせて各社各様だ。ノー残業デーとして定時退社を促したり、交代で早期退社したり、プレ金を労働時間短縮につなげ、生産性を高めている事例もある。現在、宣言書を提出した企業は300社弱。今後も働きかけを続け、働き方改革を進めていく。

 〝日本一のプレ金〟が実現した要因は、活動の母体となる「ILove(アイラブ)しずおか協議会」(森恵一会長)の存在が欠かせない。静岡市の中心街ににぎわいを生み出そうと、商店街や大型店、メディアなどを中心に任意団体として5年前に活動を始めた。プレ金への取り組みは議論百出したというが、日本一を目指し、毎月実施しようとまとまった。「〝待ち〟ではなく、全員が事を起こそうという主体者としての意識の高さは日本一」(同協議会にぎわい創出部会の雨宮潔部会長)という。同協議会と市、商工会議所などオール静岡の体制が整い、しっかり議論し、目指す方向や目的が整理できた。働き方改革で、豊かな生活を楽しむための時間を生み出し、需要の喚起につなげていく。

「新入社員を歓迎しよう」と4月に実施した名刺交換会


この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事