自然堂、松坂屋名古屋店に直営店をオープン 馬具の製造技術をバッグに

2024/11/27 11:30 更新


傷みやすい持ち手は交換できるように設計(「シゼンドウ」)

 馬具の製造技術を物作りに生かす自然堂(長野県軽井沢町、あぶかわ晫也CEO=最高経営責任者)は11月20日、松坂屋名古屋店本館4階にバッグの「シゼンドウ」をオープンした。本店以外にショップを出すのは初めて。

(神原勉)

 馬具とは「命を守る道具」(あぶかわさん)。騎乗した馬から落下すれば、大ケガにつながり、時には死に至ることさえある。だから馬具は、馬上の騎乗者が落馬しないよう、素材や製造工程には細心の注意を払い、万全を期す。あぶかわさんは馬具メーカーで技術を学び、その精神を受け継いだ。

素材選びも厳重

 同社の独自技術であるオールレザーのバッグの一本縫いは、2枚の表革を1回縫い合わせるだけで完結する。縫い目は背面の上部から下に走り、底面を奥から手前に、手前から反対方向に、そこから奥へ、再び上へと伸び、背面のもう一方の上部に到達する。

 通常のバッグはいくつものパーツを縫い合わせるため、ミシン作業を何度も繰り返すが、一本縫いは縫い始めから縫い終わるまで操作は1回。工程は簡潔になり、職人の手間も半減し、丁寧な作業を集中して持続的に行うことができる。

 素材選定も厳重だ。シゼンドウのバッグは10年使い込んでもくたびれることなく、自立する。かといって革の柔らかい風合いは新品の時のまま。植物性のタンニンなめしで適度な硬さを持たせるとともに、裏地の革の形や使い方で保形性を高めている。

「設計」の思想

 あぶかわさんは、デザインではなく「設計する」と表現する。命を守る道具である馬具に必要なのは、装飾ではなく繰り返し使っても耐えきる堅牢度。デザインを和訳すれば「設計」だが、使いやすく、なおかつ高い耐久性を実現するために素材と仕様を工夫し、創造する作業は、デザインよりも設計と呼ぶ方が似つかわしい。

 バッグで傷みやすい持ち手は、数千円程度で交換できるように設計した。装飾はないが、シゼンドウのバッグはメンテナンスしながら10年使い続けることができる。あぶかわさんは馬具の設計思想をバッグに投影する。



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