業界の"熱血人事担当者"に聞く 採用のコツとは?

2018/03/21 04:30 更新


【センケンコミュニティー】熱血人事担当者に聞く採用のコツ

 誰しも、就職活動時に一度はお世話になる企業の人事担当者。普段、どんな思いで、どんな活動をしているのか。売り手市場と言われる今、採用のコツはどんなところにあるのか。異色のキャリアやパーソナリティーで業界の〝熱血人事担当者〟と呼ばれる方々にお話を伺ってみました。

ミキハウス社長室部長 坂本達さん

4年3カ月の有給休暇で世界一周 体験や夢を語るのも仕事

企業や学校、団体での講演は3カ月間で約80回。アフリカの民族衣装を着る

 海外で働きたいと入社しましたが、社内のオリンピック選手を見る内に、「自分も輝きたい」「自分にしかできないことをしたい」「世界一周がしたい」と思うようになりました。社長に提出する定期業務リポートに、「自分の夢」という欄を勝手に設け、世界一周できそうな企画を出し続けました。結果、4年3カ月の有給休暇をもらい、世界一周5万5000キロを自転車で走りました。帰国後は旅の体験、旅を通して気付いた大切なことを採用活動や講演で話しています。近年は2~4月に採用活動、6~8月に家族と世界二周目に挑戦、9~12月が講演という周期です。

 会社説明会では、学生に「忙しくても参加して良かった」と思ってもらえる話を心掛けます。それは「内定をもらう方法」です。学生は志望動機や学生時代に力を入れたことを語りますが、結局、採用担当者がまた会いたいと思うのは、「いい気、オーラが出ている人」です。

95年から自転車で世界単独一周。15年からは家族4人で6大陸冒険を始めた

 世界一周で出会ったブータンの女性、ソナムさんがまさにそうでした。日ごろの行いが内面からにじみ出て、一瞬で引きつけられ、一度会っただけですが忘れられません。「人から感謝されることをしているか、しっかり寝て、野菜を食べて、心身ともに健康でいること」が秘訣(ひけつ)です。また、「夢を持ち続けることの大切さ」「チャレンジする人を応援する企業風土」などを伝えています。

 筆記試験の監督の時は、終了後5分ほど学生に話をします。400~500人の応募に対して、内定は2、3人と狭き門です。試験の出来が悪いのか暗い表情の学生もいますが、例え不合格でも人格や能力を否定するのではなく、ご縁がなかったと伝えます。近い将来のお客様でもあるので、苦い思い出にせず、ファンになってもらえたらという気持ちで接しています。

神戸レザークロス小売本部人事総務課課長 本間絵美子さん

前職はバスガイド、仲間に恵まれる 同期の絆を深めてほしい

神戸レザークロス小売本部人事総務課課長 本間絵美子さん

 新潟から上京し、新卒で就いた仕事はバスガイド。バスツアーで必要なパンプスを探すなかで「エスペランサ」に出会いました。私は足のサイズが25センチと大きく、地元にいるときは自分に合ったおしゃれで可愛い靴がなかなか見つけられなくて、そこで男性販売員の接客に感動したのをきっかけに、今の会社に入りました。

 当社でのキャリアは販売員のアルバイトからスタートです。お客様の表情を見ながら、コミュニケーションしながらおもてなしをするという意味では、バスガイドとの共通点もあり、年間の個人売り上げで一番になったことも。正社員になり、店長になり、人事に異動してからは今年で4年目です。

 前職の経験は今も生きています。バスガイドの同期は100人くらいいて、1カ月以上、四つのチームに分かれて研修がありました。寮での共同生活で、まさに同じ釜の飯を食った仲間に恵まれました。勤務は2年ほどでしたが、横のつながりが強く、苦楽を共にし、時に励まし合いながら成長できる同期の大切さを実感しました。

内定者や入社後の研修を充実させている本間さん(中央)

 だから今の仕事では、採用活動はもちろん大切ですが、内定後の学生が不安なく入社して、入社してからも同期で切磋琢磨(せっさたくま)できるような関係性を築いて欲しいと願っています。そのために、入社するまでに人事担当者との面談の場を複数回設けたり、内定式までに地域ごとに懇親会を開いたりと、内定後のフローを変更しました。新卒はほとんどが販売員となり、入社後は全国に配属されますので、入社前にいかに交流できるかが大切です。

 当社のブランドは若い子向けのイメージを持たれがちで「長く働けるのか」という不安を抱える学生も多いです。2人の子供を育てながら楽しく働いている自分の経験を話しながら、安心してもらうことも心掛けていますね。

タキヒヨー参与兼東京支店副支店長兼採用担当 青木正男さん

30年の採用経験持つベテラン 資格得て指導の精度高める

毎年4000枚近いエントリーシートを「3回読む」とのこと

 30年近い採用実務経験を持つ大ベテラン。自社の採用活動だけでなく、様々な大学で就活生向けのセミナーや講師、ラジオのパーソナリティーも務め、「今66歳ですが、1年中走っています」と多忙な日々を送る。

 人事に携わることになったのは、名古屋の本社から東京の総務課長職に異動になったことがきっかけだ。それまで本社で実施していた採用活動を東京で行う担当者となり、全くの手探りからスタート。「右も左も分からず、繊研新聞社の方に同行して大学の就職課を訪問し、関係作りを学んだことも」

 当時は学生の超売り手市場。「BtoB(企業間取引)の会社には、どんなに力んでも集まってくれない」と、一風変わったやり方で学生とのつながりを作っていった。例えば、社内のクリスマスパーティーに大学の軽音楽サークルや学生楽団に出演してもらったり。ある時は、社内勉強会を開いてつながりができた美大の学生たちにバルセロナオリンピックのイメージ画像を描いてもらい、買い取って商品企画に反映したり。そんな活動を通じ、学生や学校と関係を深めていった。

セミナーでは、自身が得るより多くの情報を提供するのがモットー 

 大学などで就活セミナーを行うのは、「会社説明会を開くより数倍の学生が集まるので、社名を周知してもらうのに効果的」との狙いがある。一方で、自身の経験に加え、キャリアカウンセラーとキャリアコンサルタントの資格も得て、指導の精度も高めてきた。「タキヒヨーの経営哲学の一つである〝客六自四〟にのっとり、自分がいただくよりも多くの情報を学生に提供するよう心掛けています」

 現在、「幸せなことに、採用合格者の辞退はとても少ない」とのこと。時に、内定者の家族から手紙をもらったり、社員の結婚式で、感謝の言葉と共に紹介されることもある。「そんな時、この仕事をしていて良かったなと思います」と話す。



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