「シーナウトウキョウ」 ブランド、消費者からニーズ

2017/10/13 04:29 更新


 「シーナウトウキョウ」(ゼアー、内田裕也CEO=最高経営責任者)は、ウェブ上で消費者から発注予約を受けるサービス。今秋に開始し、ファーストシーズンの18年春夏は、東京のデザイナーを中心に10ブランドが参加している。ショーや動画での新作発表と同時に受注し、既に手応えを感じているブランドもある。卸ビジネス主力のブランドが全ラインナップを消費者に見せ、在庫リスクなく販売する手段として、ブランドと消費者の双方からニーズが高まりそうだ。

(五十君花実)

 18年春夏の参加ブランドは、16日に開始する「アマゾン・ファッション・ウィーク東京18年春夏」(AFWT)でショーをする3ブランド「アキコアオキ」「ケイスケヨシダ」「モトグオ」と、群馬・みなかみ町が拠点のアウトドアウェア「マン・オブ・ムーズ」、ミラノ・コレクションでショーを行った「アツシナカシマ」など計10ブランド。「テイストや、レディス・メンズに偏ることなく東京のファッションを表現でき、海外進出も含めて挑戦することに意欲的なブランドにお声掛けした」と内田CEOは語る。AFWT参加ブランドは、ゼアーがショーの演出費用の一部を支援している。

内田ゼアーCEO


◆需給のマッチ

 マン・オブ・ムーズ(福山正和代表)とは、9月14日の受注開始に合わせ、みなかみ町から動画をライブ配信した。福山代表が新作を着用して渓流釣りをする様子をドローンで撮影し、動きの中で商品の仕様なども紹介。サイトのPV数、動画閲覧数は想定以上だったという。「新規客にもブランド認知が広がる可能性があり、初回としては手応えを感じた。今後さらにSNS(交流サイト)での拡散力が高まれば受注数も伸びるだろう。ブランドコンセプトと共鳴し合えるインフルエンサーと組むことなども有効と思う」と福山代表は話す。

 新進を中心とした東京のデザイナーズ市場では、商品を買い付ける店が全国で数店しかない、あっても確実に売れそうな一部商品しか入らない、というブランドが多い。そうした限られた商品以外を欲しがる消費者がいたとしても、需給はマッチすることがない。例えば、アキコアオキ(青木明子デザイナー)は17~18年秋冬、「ショーピースとして作ったアイテムを買いたいという消費者の声が想定外に多く、驚いた」(青木)という。シーナウトウキョウに参加することで、そうした声もくみ、地方在住で展示会に来場し注文することができない潜在顧客も掘り起こす狙いだ。

渓流釣りを中継し、新作を見せたマン・オブ・ムーズの動画ページ


◆ショー代わり

 シーナウトウキョウのサイトでは、受注ページとともにデザイナーインタビューを掲載し、シーズンに込めた思いやデザイナーの人となりが分かるようにした。インタビューを消費者がSNS上で拡散することで、受注ページも拡散する仕組みだ。また、ファッションサイトが掲載する各ブランドのシーズンルック画像ページのバナーから、サイトへ送客する。

 今後の課題として、①着用感をウェブ上でうまく伝えること②通常は受注会に足を運んでいる人をウェブ予約で満足させるための特別感の演出③素材や仕様などの商品詳細の充実などを挙げる。「将来的には、東京でショーをやる代わりにシーナウトウキョウで発表する、と考えてもらえるようなプラットフォームにしたい」という。内田CEOは楽天の出身で、「母親がファッション専門学校の講師ということもあって、元々ビジネスとしてのファッションに興味があった」。




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