リステア クリエイティブディレクター柴田さんに聞くコロナ禍の現状と今後 「今はまさにデジタル化の練習中」

2020/05/12 06:27 更新


3月初めの20~21年秋冬パリ・コレクション会場で

 現状、「ルシェルブルー」はECで頑張って消化しています。ECの売り上げは予算比20%増。でも全店閉まっている実店舗と合わせると4月中旬段階で3割減でした。リステアも同様です。少しでもお客さんが楽しくなるように、以前撮影したルックを再加工してインスタに投稿したり、自社アプリ上で接客したり。デジタルの時代になるとは言っていたけれど、今はまさにその練習をしている感じ。シフトしなければいけないようです。

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 コロナ禍以前から、英語圏向けのECサイトの見直しを海外の会社と進めてきましたが、先に進めておいて良かった。テスト段階を経て5月中に開始する予定です。海外では、日本と違ってサイトをシンプルに使いたいという要望が多いので、少ないクリック数で買い物できるように組み直しています。

 ルシェルブルーは、会社の体制が変わる前に店舗数を減らして、ポップアップを増やしていました。その間にECに注力し、ちょうど伸びてきていたので、お客様も慣れていた。ECの売り上げを落とさずに済んでいるのはそのおかげ。昨年末にSNSを強化した点も良かった。救いになっています。

 売れているのは、カジュアルな服や家で着られる服。単価が安いものが多い。海外の大手ECサイトが値引きを始めているので、そこに追随せざるを得ない高額商品もある。ECは価格を比較できる点も特徴なので、値引きが可能なものや納期が早かったものは下げています。20年春夏の商品は価値が崩壊していて、早く現金化しないといけないというムードもある。サックス(・フィフス・アベニュー)は支払いを3カ月しないという記事も出ていた。セールをしないと現金化できないのは、ロックダウンしている都市であればなおさら。セレクト業態の厳しさを感じます。

 秋冬商品では、BtoC(企業対消費者取引)のブランド「アイレネ」が好調です。4月第1週に行った消費者向けのオーダー会は、お客様のニーズに合ったようで予算を超えた。代わりに、もっとコマーシャルな商品ラインは生産量を2割ぐらい減らします。

「アイレネ」20年秋冬コレクションの受注一番人気はダブルブレストのコート(8万円)

 リステアは、工場がまだ動いていない仕入れブランドが多く、先が全く見えない。仕入れに頼らずに違うことをしないといけない。実際、大手ブランドは中国の受注がなかったから、生産ロットが足りずドロップした型が多い。工場が動いても生産がいつになるか分からないし、そのまま次のプレスプリングにスライドする説もある。本国の営業担当が解雇されて連絡が取れないブランドもある。海外ってドラスチックな面もあるので。

 リステアではコロナ以前から、環境に優しい商品企画を進めてきた。使い捨てではない、ゴミにならない日用品。その企画を早めることになりそうです。6月は売れ残りをひたすら売ることになりそうだから8月ぐらいから納品できればと思う。サステイナブル(持続可能性)の考え方は今の状況ともリンクします。地球が悲鳴を上げていたんだと思う。考えるのにはいい機会だなと思う。

 今後は、粛々と進めるしかない。そんななか、若い人たちは元気みたい。抑圧がパンッと弾けるときに、楽しい物を提供できたらいいなと思うので、今はネタを仕込んでます。例えば、若い人たちはインスタではなくティックトック経由で物を買うようになっているので、ルシェルの若手のスタッフが踊り始めています。そうやってチャネルを増やしたり、露出をデジタル上で欠かさないようにしています。

 いつもなら、この時期は海外のどこかで買い付けしています。じっとしているのは何年ぶりだろ。おかげで猫飼っちゃいました。こんなことでもなければ日本人は環境を変えられない。提案したいスタイリングも変わると思う。いずれにしても元の早い回転には戻らないと思う。シーズン一つのコレクションでいいと思うし、ばかみたいに作らなくてもいいんです。

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