ファッション業界の採用は売り手市場が続いている。コロナ禍後の急激な採用活動は「落ち着いた」との見方もあるが、企業の構築や成長に新卒および中途採用の取り組みが重要になっている。採用の早期化が進むなか、ファッション・アパレル業界に特化した人材関連サポート企業に、25年や26年春採用の現状、企業の取り組みについて聞いた。
選ばれる側の取り組みを
全体は増えていない
――25年春卒と26年春卒の採用活動の状況は。
コロナ禍を経て、短期で大幅に増えた採用活動を継続している企業と落ち着いた企業とに分かれており、業界全体の人数は増えていないように感じます。この間に必要な人員確保が出来ていないことや、事業拡大に向けた採用活動が目立ちます。そもそも、コロナ前から人手不足と言われ、人口減による学生数の減少傾向を背景に、まだまだ売り手市場は続いていくと思います。
採用は早期化し、学生は3年生の夏ごろから動きが活発化している。アパレルを含む全産業ベースでは、26年春卒採用の25年3月1日時点で、48%が内定をもらっている。24年が約40%、23年が約30%なので、どんどん早まっています。
25年卒は、70%の企業がある程度計画通りに採用でき、30%がもう少し採用したかった印象です。業種では、総合職は採用できているようですが、販売職は苦戦しており、この先も変わらないと思います。

――学生の動きや意識は。
学生は焦っている雰囲気はありませんね。就活イベントに参加する学生が若干減っているように感じます。
独自のデータ・アンケートでは、就活で「どういうところを意識しているか」の問いに、内定承諾の学生は、「会社の雰囲気」が35%、「やりがい」30%などで、内定辞退では「キャリアアップ」27%、「会社の雰囲気」20%となっています。これを見ると、学生が初めに対面する人事担当者の印象や魅力を伝えきれているかが重要だと分かります。
――中途採用の動きは。
新卒が採用できないため、中途を増やす動きは継続している一方で、中途から新卒採用に切り替える企業もあり、今は落ち着いている感じです。中途は即戦力が求められますが、そういった人材が減っていることもあるようです。
中途採用が多いのは販売職で、一時期多かったEC関連は採用が減り、企画職の募集が多くなってます。転職理由としては、「なりたいキャリアが現職では望めない」が一番で、「給与を上げたい」「人間関係」と続きます。
待遇改善をアピール
――企業の取り組みは。
26年卒内定は、3月時点で半数ほどの学生がもらっており、企業は焦っている雰囲があります。採用活動の動きも少しずつ早まり、採用人数の多い企業はインターンシップ(就業体験)を早期化し、人数が少ない企業は3月1日から本格的に動くような感じです。就活イベントでは、ブースで待つのではなく、学生に声をかけて入りやすい雰囲気を作ることが重要になっています。
初任給を上げる企業が増えています。25万円でも普通になりつつあり、30万円の企業も。待遇面の改善は重要で、条件を上げないと採用できないようにもなってきています。対応できない企業もありますが、業界的には良い傾向だと思います。企業が奨学金を返済する制度の導入も増えているようです。
採用では、選ぶ側から選んでもらう側になっていることについて、各企業がより考えていかなければいけない。当たり前ですが、企業の魅力や特徴をしっかり伝えることが大事になっています。
(繊研新聞本紙25年4月18日付)