イタリアの国際的なサステイナブルコミュニティー(エコハブ)の「C.L.A.S.S.」(クリエイティビティー・ライフスタイル・アンド・サステイナブル・シナジー)は、衣料品を中心とするサステイナビリティーを推進するキャンペーン「インサイドアウト」を開始した。ファッション製品が持つ美しさや機能性だけでなく、その裏側にある倫理性や環境配慮などの新たな価値観に焦点を当て、業界と消費者の意識変革を促す。エコロジー・コンサルティング機能を発揮して、競争力のあるビジネスを形成する〝新世代のファッション〟を提唱する。
インサイドアウト・キャンペーンは、テキスタイルやファッション製品の「目に見えない価値」を可視化し、共有するための新しいコミュニケーション戦略。従来のファッション製品の見た目や手触りなどの〝外側の価値〟に加えて、「目に見えないが測定可能な価値」の〝内側の価値〟を明らかにすることを目指している。
内側の価値とは、倫理や社会貢献的な取り組みや、サプライチェーンにおける透明性とトレーサビリティー(履歴管理)などが対象となる。この新たな価値を重視することにより「最終消費者レベルで、商品購買時において環境配慮や人権尊重に対する責任ある選択を日常の選択に変え、ファッション業界全体の透明性と信頼性を高めることが可能になる」としている。
展示会やイベント通じ
C.L.A.S.S.は、インサイドアウトのバリューシステムを推進するために、多様な活動を実践する。ミラノで開催される国際的な糸とテキスタイルの展示会「Filo」(フィーロ)などにおいて、責任あるイノベーションを実践しているパートナー企業の素材や技術を紹介する特設スペースを設け、これらの「内側の価値」を物理的に体験できるプラットフォームを提供する。
サステイナビリティーの活動を多くの人々ととも広げるためには「知識が不可欠である」という考えに基づき、意識向上を目的としたイベントやトークショーなどを積極的に開催。業界関係者や消費者にこれらの価値を効果的に伝えるための取り組みに力を注ぐ。
また、ファッションおよびテキスタイルビジネスをよりスマート(持続可能で競争力のある)にすることをミッションに掲げる。主な活動内容として、ファッション業界全体のサプライチェーンを持続可能な方向に変革するための戦略的ツールとサービスを提供している。
「価値の十戒」で透明性
11月25日にはミラノでインサイドアウトの「デカローグ・バリュー」(価値の十戒)が発表された。これは、C.L.A.S.Sによって考案され、次世代のワードローブの測定可能な側面を明らかにし共有するもの。ファッションの外部的価値に加え、倫理、社会的イニシアチブ、トレーサビリティーと透明性、環境、デザイン、健康、循環経済イニシアチブ、原料、生産、染色・仕上げなど10のパラメーターを設定している。これにアーティストのジャンルカ・カニッツォ氏がデザインしたアイコンを通じて「企業や製品のサステイナブル関連の透明性を確保して、最終消費者との信頼を生み出す」取り組みを本格的に開始した。

C.L.A.S.S.のCEO(最高経営責任者)でありインサイドアウトキャンペーンの創設者であるジュジー・ベットーニ氏は「〝信頼〟は新しいぜいたくです。C.L.A.S.S.は、サプライチェーン全体を支援し、現代の消費者に明確に響く価値観を活性化させるため社会システムに変化をもたらすことを目指します。そのためには完璧さが目的ではなく、正しい方向への一歩一歩が大切です」と強調した。
(繊研新聞本紙25年11月28日付)
