【産地中小企業が描く次の成長㊦】オリジナルブランド 産地の技術生かし生活彩る

2020/12/31 06:26 更新


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 先染め織物の産地である兵庫県西脇市を中心とした播州織産地。近年、テキスタイルを扱う産元商社や機業場の多くが製品事業に取り組んでいるが、その中でも、いち早く自社ブランド製品に取り組んだのが島田製織の「hatsutoki」(ハツトキ)だ。

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見えないもの大事に

 山や川に囲まれた西脇の自然をモチーフにしたデザインや、極細番手使いでコットンとは思えないような繊細な風合いのテキスタイル。そこから生み出す日常を優しく彩る衣服は、10年のブランド立ち上げ以来着実にファンを広げてきた。自社ECも早くから手掛け、EC比率は現在3、4割ほど。コロナ禍の今年も前年をクリアし、売り上げは4、5年前の約4倍にまで拡大してきた。

 デザイナーの村田裕樹さんは、大学在学中から服作りを始め、東京の専門学校を卒業後12年からハツトキに加わった。「最初は形のないものに時間やコストをかけることを理解してもらう難しさがあった。コストをかければかけたなりの生地が織り上がるが、デザインやブランドイメージの構築はそうではない」と、当初の苦労を語る。しかし、こだわりを持ち、徐々に結果を出したことで、周囲の理解も進んだという。「ハツトキは最近いいね」というような取引先からの声も大きかった。

 コンセプトも「最初は技術的な部分に寄っていた」という。「『こういう自然の中で、こういう景色に感動したからこの生地が生まれた』という方がより深く、着てもらう人の気持ちに入っていく。もちろん技術的な部分に立脚しているところはあるが、それはあくまで手段であって、目的は着てくれる人の生活が楽しくなったり、良くなったりすること」だ。コンセプトの骨格が出来てきたことで、ハツトキのファンも増えていった。

 最近では、織布を西脇、整理加工を尾州でといったような物作りも増えてきた。「中にいると具体的なイメージが浮かびすぎてしまう。メンズシャツと言えば、この番手の生地。こうでなければ播州織じゃないなどとなりがちだが、それは可能性を狭めてしまうことにつながるのでは」と考え、産地をクロスオーバーさせて、新たなテキスタイルを生み出している。

物作り起点の生産

 今後は、生産のサイクルをより物作り起点にしていくことにもチャレンジする。「例えば10月に展示会をして1月に卸さなければならないとなると、3カ月でまた一から生地を作るのは難しく、在庫に頼らざるを得なくなってしまう。オリジナルの生地を一から企画して製品まで持っていこうとすればもう少し時間が必要。顧客の顔が見えるような形になれば、ある程度の数量も見込めるし、時間があればより丁寧な物作りができる」とも。

 顧客の顔を思い浮かべてより良い製品を作り豊かな暮らしを提案するというのは物作りの原点の一つ。テキスタイルから企画できる産地ならではの強みを更に生かし、新しいサイクルの物作りに挑む。

今秋冬のフィールドコートはブラックメリノとサリー・フォックスさんが手がける茶綿の自然な色合いを生かした

(繊研新聞本紙20年11月20日付)


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