食品業界では石油由来のプラスチック使用量を削減するため、廃棄処分されてきた素材や未利用資源を有効活用した複合素材の開発・採用が進んでいる。いずれも強度や機能は既存品と比べて遜色なく、様々な用途に使用できる。サステイナビリティー(持続可能性)やSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みで消費者の環境意識が高まっているため、大手メーカーの新商品や小売業のPBなどで採用が進めば、市場は一気に拡大しそうだ。
エコ素材で新価値
食品売り場を見ると、実に多くのプラスチック包装が使われている。飲料用のPETボトルや弁当・総菜容器はもちろん、カップラーメンの容器、お菓子の袋、おにぎりのフィルムなどの原料は主に石油由来だ。
これら包装フィルムの利点は、耐久性があって軽いこと。腐食・サビなどに強く、防水性も高い。複雑な形に加工しやすい上、低コストで大量生産できる点も大きな利点。レジ袋やテイクアウト用のスプーン・フォークにプラスチックが使われるのも、このためだ。
ただし、プラスチックは耐久性が高い分、正しく廃棄されなければ海洋・土壌汚染を引き起こす。焼却処分時の温室効果ガスの発生も問題視され、食品業界では数年前から〝脱プラスチック〟の動きが活発化。環境負荷低減に有効な新素材の開発が進んでいる。
すでに1万超えも
TBMが開発した「LIMEX」(ライメックス)は、石灰石を主成分とした複合素材。すでに1万を超える企業や自治体で導入されており、食品業界でもレジ袋や豆腐容器、総菜容器などで採用が進む。
植物由来のポリ乳酸(PLA)を使用した「PLAiR」(プレアー)を開発したのは、大手電気機器メーカーのリコー。従来PLAは石油由来のプラスチックに比べて耐熱性が弱く、加工しづらいデメリットがあったが、独自技術でこれらを解消し総菜容器としての試験販売が始まった。
バイオマスレジンホールディングスの「ライスレジン」は、食用に適さない古米や食品工場で発生する破砕米などを利用したバイオマスプラスチック。モスフードサービスが運営する「モスバーガー」全店でライスレジン製のカトラリーを導入し話題になった。
アミカテラは、稲わらや放置竹林の竹などの植物繊維を主原料にした「modo-cell」(モドセル)を開発。プラスチック代替素材としてストローや使い捨て容器に使われている。
これらの素材は、いずれも石油由来のプラスチックの代替として実用化が進む。食品容器に新たな価値を付加するエコ素材として、今後に注目したい。
(日本食糧新聞社・涌井実)