「パリにマリあり!」夏木マリインタビュー(松井孝予)

2017/05/15 10:45 更新


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MNTパリ公演 ソールドアウト満員御礼!


パリ・ルーヴル美術館内オーディトリアム(大ホール)で先月25日、夏木マリ演出、夏木マリ+パフォーマンス集団MNT(マリナツキテロワール)による印象派NEO(ネオ/Eの上にアクセント)vol.3「不思議の国の白雪姫」が公演された。

リハーサルでは漏電のアクシデントを「パリだから仕方ない」とさらりと受け流し、パフォーマーたちを率いぶっつけ本番に臨んだ夏木マリ。パリ公演のために誂えた「ジバンシィオートクチュール」の衣装を纏い、天性と努力を積み重ねた美しく、そして力強い身体表現で満員のホールを魅了した。



ルーヴルで公演された「不思議の国の白雪姫」  ⒸJean Couturier


印象派NEO第3弾

ー「不思議の国の白雪姫」は、「わたしの赤ずきんちゃん」「灰かぶりのシンデレラ」に続く童話をテーマにした印象派NEOの3年振りの新作。新鋭の振付師、井出茂太、小㞍健太、長谷川達也、牧宗孝を起用、また映像を取り入れたりと新しい試みに挑戦されましたね。

夏木マリさん(以下、夏木):絵本は言葉が面白いじゃないですか。言葉のない絵本なんてありえない。でもその言葉を排除して会話がない絵本をやってみたかった。それがナンセンスで面白い。それなら今活躍している私の好きなコリアグラファー(振付師)、あえて方向性の違う4人の振り付けをミックスしたらナンセンスにいくな、と思いました。絵本の言葉遊びを、私たちの身体遊びに置き換えるて、最初のイメージ通りに作品が仕上がりました。

演出もパリ公演を想定し、セットを使わず映像にしました。舞台芸術と映像は相反したものなんですね。生身の人間がやることが素敵なんだけど、それを今のテクノロジーとどうしていくか、これが今回すごく勉強になりました。

ーそしてパリ公演の衣装はジバンシィオートクチュール

夏木:普段から私の生活を応援してくださっているジバンシィさんから衣装提供のお話をいただきました。赤の衣装と最後のドレスは、ジバンシィ。パリだけです。パリ公演の1か月前に、パリからおふたりのフィッターの方々が東京に来てくてくださって、ジバンシィのサロンでお直しをしていただきました。そしてパリでも最終のフィッティングをしていただきました。オートクチュールで舞台なんて、日本ではありえないですよね。

ー「不思議の国の白雪姫」ツアーは3月に東京からスタート、4月に京都でも公演されました。パリに向けてこの新作をどのようにブラッシュアップしましたか。

夏木:もうこの私がフランス語に挑戦してるんですよ。パリで試したら全然通じなくて、「こりゃダメだ」と思いました。95年にパリのコンセルヴァトワール(国立芸術学校)で、当時一人舞台だったコンセンプチュアルアートシアター印象派を演じた時も、他にもフランスではアヴィニヨン演劇祭で公演したことがあるのですが、パリの人たちは字幕があまりお好きではないと聞いていたので今回は自力でやってみようと。

 かなりの挑戦なんですけど。フランス語が全くしゃべれないので、まずは女性名詞、男性名詞からはじまり、日本にいるフランス人のパフォーマーから教えていただいたり。毎日、「ハア~」とうがいばかりしていましたよ。(注/仏語の発音練習にはうがいがもってこい)。

 言い方が幼稚なダイアログなると思ったのですが自分なりのチャレンジ精神をパリに持って来たかったので、日本語でやるよりはいいかなと。私の台詞は全部フランス語にしました。



ジヴァンシィオートクチュールのドレスで ⒸJean Couturier


夏木マリのルーツはフランス?

ー夏木さんのルーツはこのフランスにあるとNHKの番組でお話されていましたね。

夏木:そうなんですよ。私の母が外国人のような顔をしていたので、昔から怪しいと思っていたんですけど。NHKの「ファミリーヒストリー」という番組で、私の4代前が八丈島でフランス人と結婚していたのではないかというストーリーが浮上して。戸籍が紛失してしまっているので定かではないのですが、もしそうであれば私には16分の1フランス人の血が入っていることになるんですよね。

 そういえば昔から私がネーミングするものは、すべてフランス関係。この「印象派」もそうですし、私のブルースロックのバンド名も「ジビエ・ドゥ・マリー」、私がディレクションしている東京の六本木の米ぬか酵素浴サロンも「ボンジュールでこんにちは」というふざけた名前にしたし、(劇団の)チーム名もマリナツキテロワール。フランスに行くのは他の外国より何か上がるんですよ。

 この気持ちは何なんだろうとずっと思っていたんですけど。あの番組でちょっと腑に落ちました。フランスの香り、何か好きなんですよね。海外ではどの街よりパリへ旅行した回数が一番多いです。

ーそれでは旅人夏木マリさんにとってパリの魅力とは

夏木:パリは石文化なので、橋の上でインスタグラムの撮影しても、日本と違ってお洋服の映え方が全然違うんです。写真が素敵に見える。紙文化の人間としては石文化の写りの違いに、やっぱり上がりますよね。写真撮りまくり。何故なのかわからないけど絵1枚でもステキになるって、私がはしゃげることのひとつです。食もそうだし、着るものもそう、パリに住んでいないけど衣食住がすごくチャーミング。そして前回来た時と同じ街並。変わってないのがいい。場所でいえば、セーヌ川周辺が好きですね。


プレーヤー 夏木マリ




ー印象派、ライブハウスツアー「マジカルミーティングツアー」、そしてマリさんがご主人の斉藤ノヴさんと立ち上げた音楽とバラで途上国の子供たちの教育環境とその母親でもある働く女性たちの雇用の向上を支援する社会貢献活動 “One of Loveプロジェクト”に通じる、プレーヤー夏木マリの信念とは。

夏木:保守的にならず攻撃的に行く。そういう方が性に合っているみたいですね。失敗しても攻めて行く。失敗することが多いけど、やらないよりは経験した方がいいかなと思っています。安定したキャリアに乗ってるより、私は不安定な方が気持ちがいいです。いただくプロジェクトも、いつも新人の気持ちで臨んでいます。ドキドキなんですけど、それがいいなかと思っています。

ー何冊かエッセイを書かれていますが、ロクマル(夏木語で60才)を機に『私たちは美しさを見つけるために生まれてきた』(幻冬舎)を上梓されました。

夏木:考え方が日進月歩ですぐ変わるんですけどね。ファスティング(断食)で経験しましたが、人間って食べ過ぎ。朝りんご1個でお昼迄持ちますよ。好きなものをいただいてますが、いつも自分に言い聞かしていることは、腹八分目、と、食べる順番。シワが増えても何でもいいけど、事実と向き合いだったらどうしていこうか、ということになる。

 年を重ねるということはこうした点が大変だと思います。若い時は好きなもの食べてカーッと寝ても、翌日復活してるじゃないですか。今そんなことすると復活しないですよね。だからしょうがないから食べる順番を考えたり、朝りんごだけにするとか、食べ過ぎたら動いてみるとか。辛い悲しいって感じね。やんなきゃいけないから。

 若い子によく言うのですが、自分を発見しているだけじゃだめ。発見なんて当たり前のこと。そのあと自分を作っていかなきゃだけです。人生ってイメージだから、そのイメージを持っていないと前には進めません。


インタビューの場所、ル・ムーリスにジバンシィで現れた夏木マリさん。本当にきれいでカッコいい。ただ夏木さんに見とれて憧れているだけでは前に進まない。自分をクリエイションしなければ。と、インタヴューを締めくくろうと思ったがまだ終わらずに、ここで夏木漫談、フランス流に言うとマリディアローグをもうちょっと。




夏木:フランスの映画に出たいですよね。でも無理ですよね、フランス語が。

ーフランスがルーツなんだから大丈夫ですよ。

夏木:そう思うでしょう、それが唯一の支えですけどね。くじけそうになりますよね。いいですね、フランスに住んでいて。

ー交換しましょうか?

夏木:交換したいですよ、フランス語ができればね。フランスでは成熟に「ブラボー」じゃないですか。その点が羨ましいです。あまり人のことを羨ましいと思わないのですが。日本は年を取ると終わり、みたいな感じがありますよね。成熟なものをもっと認めるようにしないとね。


いやいや夏木さん、もっとお話したかった。成熟文化だからこそ、フランスには夏木マリのようなプレーヤーが必要なのです。日本のみなさん、この続きはshibuya duo MUSIC EXCHANGEからスタートしたマジカルミーティングツアーや6/21に赤坂BLITZで開催される「One of Loveプロジェクト GIG vol.3」でどうぞ!


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ⒸHiro KIMURA

なつき まり 73年デビュー。80年代に舞台の世界に飛び込み、1993年から自らが企画、演出、出演まですべてをこなすコンセプチュアルアートシアター「印象派」、そして2009年にパフォーマンス集団MNTを立ち上げる。2010年に社会貢献活動One of Love プロジェクト設立。芸術選奨文部大臣新人賞(1984年)、日本アカデミー賞優秀助演女優賞(2003年)、モンブラン国際文化賞(2010年)をはじめ数々の賞を受賞。エッセイの著作も多い。


取材協力/Hotel Le Meurice


松井 孝予:仏蘭西は1日にして成らず。同居犬ジャック・ラッセルたち並の嗅覚を持つパリシェンヌ(パリ犬)になりきって、この国の奥深さをサラッとお伝えしていきます

まつい・たかよ 締め切りから解放されたい欲望からトーキョーの出版社勤務にピリオドを打ち、職ではなく食を求めパリに来たはずなのに… 美食だけの人生は許されず(当たり前)、センケンの通信員をしています。締め切り+時差の皮肉な運命に逆らわず、仕事と食歴磨きに励む毎日です


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