【海外ビジネスの現状と課題①】アンリアレイジ

2018/07/07 07:00 更新


海外ビジネスの現状と課題 海外進出するデザイナーに聞く① アンリアレイジ アジア戦略と流通の見直しを強化 上海のショールームと組み、展示会も

 この間、海外へとコレクションの発表の場を移しているデザイナーが増えている。ファストファッションをはじめとする市場の変化で、デザイナーブランドは国内だけでなく海外へと販路を拡大する方向性が強まっているためだ。世界市場を意識した発表の仕方や売り方にはいろんなパターンがある。ショー形式で見せるブランドもあれば、プレゼンテーションもある。

 セールスの仕方もショールームと契約する場合もあれば、自分たちで単独展を行う手法もある。ブランドの規模や考え方によって手法はさまざまで、何が正解かも一概には言えない。それぞれのブランドの特性を生かしながら、市場をどう広げていくのか。そのための課題は何か。この間、海外ビジネスを進めているデザイナーに聞いた。

(小笠原拓郎)

 「アンリアレイジ」は、15年春夏からパリ・コレクションに参加して8シーズンが終了した。2シーズン目までで取引先は25店まで広がった。そこからはほぼ同じ店舗と取引を続けている。アンリアレイジのセールスを手掛けるのはショールーム「ノーシーズン」。当初の思惑では今の2倍の50店くらいのドア数を見込んでいたという。しかし実際始めてみると、アンリアレイジのテイストとプライスレンジからみて、そこまでの拡大は難しいと分かってきた。

 そこで、現在、力を入れているのがアジア戦略と流通経路の見直しだ。近頃、アジアのショールームや中国のショップがパリのショールームに訪ねてくるケースが増えた。ノーシーズンのままアジア市場を伸ばしていくのが難しいと思い、19年春夏からアジアは上海の「ノットショールーム」と組んでビジネスを広げていく。同ショールームはLVMHヤングファッションデザイナー大賞にノミネートされたデザイナーやアンダムファッションアワードに選出されたデザイナーなどを集めている。ロサンゼルスのマックスフィールドやパリのレクレルールといった専門店もこのショールームを訪れるようになっている。

 そんなショールームとアンリアレイジの双方のビジョンが合ったこともあり、春夏はパリ・コレクションとパリの展示会後に上海で1週間、展示会を開催する。東京の展示会はその後となる。アジアの店舗はまだ7、8軒だが、すでに海外の売上額の50%を占める。アジアはオーダーも店もアグレッシブでまだ伸び代があると見る。大きな市場であるため、中国人チームと組むのが有効だと判断した。

 流通経路の見直しでは、新しい輸出代行の会社と組むことで、流通経費を削減して内外価格差をできるだけなくしていく計画だ。いくつかの日本のブランドを一気にシッピングしてヨーロッパにデリバリーする法人と組むことで、今までの約80%の価格で出荷できるようになるという。内外価格差をより減らして、店頭での消化率を高めることで安定したビジネスの継続を狙う。

アンリアレイジの18~19年秋冬コレクションから

 商品展開では、これまで開発した素材や技術を生かした「アンシーズン」のラインを1年前から本格化している。メインコレクションでは新しい技術やテクニック、素材を見せる。それを見てショールームに訪れるバイヤーから評価されるとともに、実際に着られるかどうかでギャップもあった。アンシーズンはサイズ展開が豊富で体形を問わないカットが多く、アンリアレイジが在庫を確保しているためリピートオーダーも可能となる。ミニマムオーダーも無く10日~2週間で発想できる。このため、この2シーズンでアンシーズンで新規店が増えて、それがメインラインにつながるといった実績もあった。

 協業相手の販路を生かしたブランドの認知度アップも図る。「アシックス」や「オニツカタイガー」「ポーター」などの持つ口座数を生かして、アジアでの知名度を広めていくとともに、アップルストアではiPhoneケースの協業商品も販売している。実験的なものはアシックスなどの協業ラインで、世界の販路に出て行くようにしている。

アップデートや開発を続ける“もっと売りたい”売り先とつながる

デザイナー 森永邦彦氏

 やりたいことはどんどん変わる。すべてがゼロベースで、それは好きだけど、それぞれの生地屋さんとすごい熱意を持ってやるので、それを一度きりの付き合いで捨てていってしまうのは本意ではない。作ったものをちゃんと世に出したいというのはあって、過去を焼き直すのとは違う使命感を持っている。昔作ったものをもう一度やると、テンションも下がるしファッションの本質的なところから外れる気もしたが、ベースのある取引の上で実験的なことをやるという考え方もある。アンリアレイジは今まで気付いてくれなかったところに玉を投げる。アンシーズンはそのシーズンもっと売りたかったという売り先さんともちゃんとつながりたい。半年ではなくもっとアップデートしていけたり、精度を上げていって開発を続けている。

森永邦彦氏

■データ

コレクション発表形態/パリ・コレクション及びパリ展示会

セールス形態/ショールーム「ノーシーズン」

海外取引先/25店前後

現在の売り上げ比率と目標/日本70%:海外30%、いずれは日本30%:海外70%



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