11年ぶりに取材した。大阪・南船場の南船場心斎橋ビルの2階にあるセレクトショップ、ブティック・エルミタージュ。国内ブランド中心に欧米ブランドを加え、メンズ、レディス、古着などを扱う。店の場所も雰囲気も当時のままだった。
(高田淳史)
客のテンション下げず
橘徹代表の「自分が欲しいと思う服、着たい服、いいって思った服を仕入れる」というスタンスも以前と変わらず一貫している。だからこそ接客でそうした思いや〝熱〟が伝わるのだろう。今秋冬では「セブンバイセブン」のウールコートが「面白かった」。生地の裏側にビンテージストールを何枚も貼り付け、それをニードルパンチでたたいて表側にストールの柄を浮かび上がらせていた。1着約20万円。4着仕入れ「すぐに売れた」。もっとあれば売れるはず。ブランド側にも在庫はあった。しかし追加発注はしなかった。「顧客がめちゃめちゃいいですね、ってすごい喜んで買ってくれた。その人が次、店に来た時にまた同じ商品があったらテンション下がりません? 逆になかったら、あの時買って良かったってなる」。これを日常的に繰り返しているからこそ顧客は店に足を運び続けるのだろう。
それでも売れない服もある。「やっぱりなと思う。これも仕入れとくか、と〝妥協した〟服は売れない」。だからこそまた、「本当に欲しい、いいって思う服を仕入れる」原点に返る。
コロナも影響なし
店を開いたのは05年。大阪では堀江エリアに注目が高まり、南船場の集客力は落ち始めていた。「堀江ほど人が多くなく、静かだったから」と南船場を選んだ。顧客は服が好きな30、40代の男女で、カップルや夫婦での来店が多い。滞在時間は長く、じっくりと服を楽しむ。コロナの影響もほぼない。「でもそう言われれば大阪の人でもオンラインからの購買が増えた」程度だ。店舗は1店のみでオンラインショップの売り上げは全体の3割ほどで大きくは変わらない。オンラインは大阪以外からの購買が中心で「北海道から沖縄まで幅広い。すごく買ってくれるが、まだお会いしたことがない顧客も多い」と笑う。
ホームページでは新作が入ると細部をたくさんの写真で見せるなど丁寧に商品紹介する。身丈や肩幅、身幅、袖丈などを細かく書くが、「サイズで悩んで電話してくる人もいる」と妻の真紀さん。身長や体重を聞きながら、必要であればその人が普段着ている服の身丈や袖丈などを測ってもらいウェブで掲載する長さと比べてもらうなどで「返品はほぼない」。
仕入れるブランドは多少の入れ替えはあるが、「扱い出したら末永くやりたいタイプ」で大きくは変えていない。「服が好きでそれを商売にできて、顧客がこの服めっちゃいいですね、と喜んでくれる。飽きることはないです」と言い切った。
(繊研新聞本紙21年1月4日付)