【次世代型ビジネス】オンワードとストライプの挑戦①

2018/11/10 07:00 更新


日本版スマートストア始動

 オンワードホールディングス(HD、保元道宣社長)とストライプインターナショナル(石川康晴社長)が次世代型の小売りビジネスに挑戦する。立ち上げたのは店頭在庫を持たない予約制ショールームストア、日本版スマートストア・プロジェクト。

 ファッション分野での戦略的パートナーシップ(業務提携)を基に、「オムニチャネル時代におけるリアルのタッチポイントを構築し、日本ならではの接客対応を発揮する」(保元社長)狙い。

 東京五輪の前をめどに、早ければ19年秋にオープンする。今後、①生産基盤の共有化②ECモールの相互出店③海外生産における工場監査の合理化などで、2年を目安に100億円規模の提携効果を目指す。

(北川民夫)

◆販売スタッフ生かす

 両社のスマートストアは通常店舗と異なる完全予約制。来店予約のある日時のみ運営し、販売スタッフが常駐しない販売形態。都市部主要駅に近い好立地に開設し、対象となる女性客の仕事帰りや休憩中など利用者の都合に合わせて接客する。

 「女性客の生活動線を考慮してエステ感覚で来店するショップにする」(石川社長)。店舗面積は約330平方メートル。他社ブランドを含めて約100ブランド程度からスタートし、「将来的には約825平方メートルで1000ブランドの品揃え」を計画する。

 米国や中国で進展する無人店舗ではなく、「販売する人材を生かすことが今回のスマートストアの特徴。販売員経験5年以上のキャリアを持つスタッフを配置し、〝ファッションのコンシェルジュ〟として位置づけることで、販売員の社会的地位を向上させたい」(保元社長)という。石川社長も「パーソナルスタイリストとしての付加価値を発揮する。顧客がゆったりと店内で飲食を楽しみながら滞在時間を延ばすことで、購買を高められる」と話す。

 将来的には両社のジョイントベンチャーによる店舗運営も想定、「国内は政令指定都市、海外は上海、北京クラスの都市部に出店したい」(石川社長)。プロジェクトリーダーは、オンワードHDの村田昭彦常務執行役員デジタルトランスフォーメーション担当。

それぞれのビジネス基盤を生かした取り組みが加速する(左がオンワードHD保元道宣社長、右がストライプインターナショナル石川康晴社長)

◆合理化とシナジー

 戦略的な業務提携ではいくつかの課題があるが、生産基盤の共有化では、オンワードHDの自社工場及び委託工場で、ストライプのブランド製品を生産する。ストライプは、自社製品の品質向上と小ロット生産による小回りの利いた商品供給を目指し、オンワード側は生産ラインの稼働率向上につなげる。

 ECモールの相互出店は、5日にスタートした。両社がそれぞれ運営するECモール「オンワード・クローゼット」「ストライプデパートメント」に双方の基幹ブランドを出店する。オンワードHDが「23区」「自由区」「組曲」をストライプデパートメントに、ストライプが「アースミュージック&エコロジー」「アメリカンホリック」「コエ」をオンワード・クローゼットに出す。今後、ブランドを拡大する方針。

 海外生産における工場監査についても、両社がそれぞれ行っていた縫製工場のCSR(企業の社会的責任)監査やQC(クオリティーコントロール)監査を共同で行い、合理化する。

 オンワードパーソナルスタイルが販売するオーダーメイドスーツブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」のレディススーツでは、ストライプの実店舗とEC販売での顧客データを基に、顧客を誘導する。ストライプが持つF1層(20~34歳女性)を中心とした約600万人の顧客データのうち、就活スーツ需要が見込まれる20~22歳の約100万人分のデータを基に、効率的な販促を仕掛けて市場拡大を狙う。

 百貨店向けのF2層(35~49歳女性)を主力とするオンワードHDと、SC向けのF1層を主力とするストライプは、包括的な業務提携を通じて、それぞれの得意分野を生かしたシナジーを目指す。保元社長は「世界中の消費動向が激変している。

 アパレル不況と言われるが、消費者の買い方が変化している現状に対して業界が変化してアジャストしなければならない」と語り、石川社長は「スマートストアでいえばアマゾン、アリババ対オンワード、ストライプの構図だ。実店舗を持つリテール側からの目線で作ったスマートストアが世界標準になるよう全力を挙げる」と強調した。

(繊研新聞本紙9月7日付)



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事