【レディスアパレル&専門店オンライン座談会】コロナを乗り越え進化すべきことは

2020/07/13 06:29 更新


 ファッションは対面接客が欠かせないビジネスモデルだと考えられてきた。だが感染症拡大防止が恒常化する世界では変革が求められる。テレワークが浸透したウィズコロナ社会では、以前と何を変えなくてはならないのか。緊急事態宣言が全国的に解除される直前、コロナ禍で健闘を見せたレディスアパレルメーカーと婦人服専門店の4社にZOOMを使ってオンラインで語り合ってもらった。

(20年5月19日実施。聞き手=北川民夫、構成=津田茂樹)

【出 席 者】

〈婦人服専門店〉

イシカワラボ社長 石川英章さん

アンスリール代表 花岡由香さん

〈アパレルメーカー〉

アイランドユニヴァース社長 村山幸三さん

三澤執行役員ヴァントウルワ事業部部長 高木宏直さん


■BtoBtoCの時代へ

 ――まずは自己紹介と新型コロナ感染防止が呼びかけられた3月以降の状況を。

 村山 卸専門のレディスアパレルで全国の専門店に販売しています。春物の市場分析となる現物の追加受注では2月はデニムが絶好調で前年同月比40%増、3月はコロナの影響が出始めたものの10%増と好調が続きました。ところが4月、緊急事態宣言を受けて60%減と急転。5月も同様でしたが、8都道府県を除く宣言解除後に追加発注が相次ぎ、5月単月は40%減でした。7月までの春夏物トータルでは15%減で厳しいと見ています。

村山幸三さん

 高木 当社も卸が主体ですが、近年は自社ブランド「アンティグラヴィテ」でファッションビルなどに出店し、自社ECも始めました。20年3月期は3月の売り上げが半減して年間目標に届きませんでした。3~5月の予算は例年比30~40%の達成となりそうです。ECなど卸以外の販路のあるブランドは何とか50~60%に持ちこたえられた感じです。今後は例年の50%を保ちつつ60~70%を目指すと言ったところです。

高木宏直さん

 石川 静岡県三島市でレディスセレクト「イシカワラボ」を運営しています。1~4月の販売実績は40%増でした。新型コロナの影響で実店舗売り上げは半減しましたが、専任を配置し、サイトを刷新したネットショップの売り上げは約10倍に伸長しました。3月は700万円、4月は900万円、5月は1200万円に届きそうです。ネットが実店舗の減収をカバーしました。

石川英章さん

 花岡 大阪府吹田市でレディスセレクト「アンスリール」を運営しています。新型コロナの影響は感じていません。顧客の来店数は減りましたが3密を避けて、近辺の顧客もネットで購入するようになり、売り上げは大きく変わりませんでした。1年半前からインスタグラムのライブ配信をしており、顧客がそれを見て購買するケースが増えています。スマホ特化のビデオアプリ「IGTV」などで様々なライブ配信を見る人が増え、たまたま当店のライブ配信を見て新規客となった例もあります。

花岡由香さん

■コロナ禍で変わる秋冬物

 ――アパレルは今年の秋冬物受注はどのような仕掛けを考えていますか。

 高木 秋冬物は2月から準備を進めてきましたが、3、4月に商品を見せることがかないませんでした。6月2週から展示会を徐々に始め、その反応を確かめつつ進めていきます。

 卸先では秋物の立ち上がりに、春夏物で残った長袖を販売するところが多いようです。当社も対応しつつ、ニーズの強い夏物の新作の7月初旬納品を進めています。これは減収のカバーというより、卸先へのサービスの意味が強くあります。

 村山 秋冬物の立ち上がりは、通常だとセールが一段落した7月末から8月下旬にかけて、夏物素材で秋色の商品などで構成したコンパクトなパッケージを投入します。今年は3、4月の営業自粛で売れなかった春物在庫を7、8月にプロパーで販売しようとしている店が多いようです。

 専門店経営者は9月に秋物があれば良く、4、5月の1回目の秋物展で発注するも良し、2回目の7月展で9月納品を買うのも良しなのです。

 そこで当社は初回の秋物展予算を大幅に縮小し、2回目を拡大することにしました。卸先は6月までは20~30%減収、7月のセールで一気に売れるのではないかと予測しています。

 それでも秋冬物の初回展は前年予算比で半減、2回目は10%増の見込みなので厳しいシーズンと言わざるを得ません。

 ――仕入れる専門店の秋冬物対策はどうでしょう。

 石川 仕入れ面は心配していません。リモート主体でオーダーしていますが問題はありません。課題は売り上げ急増中のネットショップの人員不足です。

 実店舗では得意客しか来店しない状況で、自粛の延長にあると思います。実店舗顧客には紙媒体のニュースレターを増刷して送り、週2回のインスタライブも紹介してデジタル、アナログ両面で情報発信をしていきます。

 花岡 今は展示会に行きたい思いでいっぱいです。私は展示会での様子もライブ配信して、顧客の要望に応えながら発注しています。1品番で40枚前後のオーダーとなることも少なくありません。5月はそれができない状況でした。

 6月は様相が変われば訪展したいと思っています。楽しみにしている方が多いライブ配信を続けたいのと、インスタグラムの機能をさらに活用したい思いもあります。

 ――インスタグラムなどオンラインを使った受発注の広がりは加速したのでしょうか。

 村山 まず専門店のITリテラシーは高いのか。取引先全店にデジタルツールの利用状況を聞き取りました。コロナ初期の3月上旬では、フェイスブック利用が約半数、インスタグラムは約6割、ブログなど含むEC、通販をする店は約3割でした。5月18日時点ではインスタグラムは10ポイント増の約7割、通販は15ポイント増の約45%と増え、明らかにコロナの影響で増えています。

 今年の大型連休は取引先180口座のうち、45口座の約80店が休業しました。休業していた店の半数はECを導入せず、1カ月以上全く売り上げがない状態でした。こうした店になぜしないのかを聞くと「よくわからない」「今さら」という答えが返ってきます。この姿勢は年齢に関係なく、高齢者でもやる気のある方は積極的に教えを受けに来ます。服はワインじゃないのだから、じっくり寝かせてはいけません。顧客接点の拡大のために「今からでも遅くない」とネットショップ開設を勧めてきました。

■受発注スタイルが変化

 ――専門店のITリテラシーが高まれば、アパレルの受注方法も変わるでしょうか。

 村山 専門店のデジタルツール利用促進のために、当社ではデジタルスワッチや動画ツールを駆使した展示会を始めています。当社の3月展の来客数は前年から半減しましたがデジタルスワッチの受注は50%増。トータルではほぼ前年並みでした。

 デジタルが苦手な人を想定して、デジタルスワッチは展示会で見慣れた絵型帳に合わせています。絵型のボタンを押すと受注サイトに移動し、全品番に動画での説明が付きます。デジタルコンテンツを用意していたおかげで売り上げの大きな下落を止められたのだと思います。

 高木 当社も3月の初めに、このままではまずいと言う危機感が生まれ、対面営業への不安もあり、企画書のウェブ化に着手しました。BtoC(企業対消費者取引)だと商品画像である程度現物を想像して購買することができますが、BtoB(企業間取引)だと企業としての責任が伴い、画像と現実の商品の差異を少しでも感じれば発注を控えることになります。バイヤーの想像力を高められ、不安をなくすサイトにすることが課題で、提案する側の努力が問われています。

 ――専門店のバイヤーとしてオンライン発注に不安はありますか。

 石川 動画での説明があれば、ある程度の商品理解はできると思います。風合いなどの確認のために商品に触れなければならないものもあり、取引先によってケースバイケースだと思います。ただコロナ禍にあっては、リモート発注だけで良かったところが多かったです。この事態で、資料がかなり充実したところが増えたことも要因です。

 展示会に行ったからといって情報がきちんと伝わるかは別の話です。これは我々バイヤーにとっても、良いヒントとなりました。わざわざ遠方の展示会に出向くよりリモート発注を活用する場面は増えると思います。

 花岡 メーカーのオンライン受注の努力は理解しています。ただ女性視点で言えば、着用して確認しなければ不安です。ただ商品を売るだけならリモート発注しても良いのですが、自分の得た触感や着心地の感想を顧客に伝えるには、着用画像だけでは理解が不足します。また多くのサンプルが並ぶ展示会はコーディネートのイメージが湧きやすく、セット販売を考える上でも従来型の展示会の必要性は、今こそさらに感じています。そこにはバイヤーのジェンダーの違いもあると思います。

 高木 当社はバイヤーの声を聞き入れて商品を作り、卸してきましたが、独自性のあるブランドを作るために「アンジェム」を始めました。当初は伸び悩みましたがデザイナーに自由に作らせ、営業にはバイヤーからのマイナス意見を聞き入れないようにすると急に売れだしました。ECモールに出店、消費者に販売するとさらに売れ、お気に入りブランドとして1万人が登録するようになり、卸と同等の売り上げになりました。

 ――デザイナー、バイヤーそれぞれの個性は相いれることができますか。

 高木 メーカーの立場からすればデザイナーの思いを優先させたい。多くのブランドの個性を組み合わせて、さらに良くなるスタイリングをバイヤーや販売員の方がライブコマースなどで広く伝えれば、ファッションの幅を広げると思います。

 村山 アパレル卸は多様な専門店と取引するため、デザインをこれだと決めつけると領域を狭めかねない。バランスを取る必要はあります。ただ個性は意外とシンプルなものが発揮することが多く、細かなデザインだけでなく全体のディテールで示す時代に入っているかと思います。

 石川 仕入れの立場で言えば、そのブランドにしかない世界観のあるものを選びます。そうしたものは上顧客の受けが良い。一方、売り上げのために多く売るものは、売れ筋や価格志向品も必要です。ただ店の個性は販売する人のコーディネート能力、人柄、信用に左右されます。そのバランスの取り方に店の哲学が問われるのだと思います。

 ――店の信用や個性となる販売員の資質はネットで伝えられるでしょうか。

 石川 私はダイレクトメッセージでのやり取りで、店頭同様の接客ができれば伝わると思います。インスタライブも同様で接客術に自信があれば伝わることは、コロナ禍を経て確信になっています。

 村山 花岡さんのアンスリールのインスタグラムはピントや影の使い方など、商品画像の見せ方がものすごく上手。石川さんのイシカワラボは早くから動画を扱い、ライブ配信も先駆けて多くのことにチャレンジされてきました。「ここにしかないものをあの人から買いたい」が専門店の最終形。両店ともネットは見せるではなく〝魅せる〟。このレベルでないと売れないのが、どの店にも共通していると思います。

 石川 アイランドユニヴァースは取引先を良くヒアリングして分析し、改善を進めておられます。こうしたアパレルは実に少なく、他社も追随して欲しい。専門店のBtoCの関わりを、アパレルメーカーはどこまで本気で理解してくれるか。我々は仕入れた商品の良さを消費者にどれだけ伝えきれるかが問われていくのだと思います。

■未来への共通の目的を

 ――アパレルと専門店が共生するために何が必要なのでしょうか。

 高木 メーカーは商品でもうけるより、相談料で食べさせてもらっているくらいの感覚を持つ方が良いかも知れません。商品でもうけるというのは単品だけのこと。長い目でどのような店作りをするのか、我々の提案するブランドはどのように変わっていくのかを視野に入れたコンサルタントが必要な時代になれば良いと思います。

 村山 メーカーは出張でしか知り得なかった店の立地が今はわかるようになり、SNSでバイヤーがどのように顧客と接しているのかも知ることができるようになりました。BtoCからBtoBtoCに向けた企画の時代に入ったのだと思います。

 メーカーは自分たちだけの一品を作り、素材などその商品のロジックである説明と哲学ともいえる思いを合わせて提供することで共生していく。最終的にはともに顧客作りをしていく姿勢でないと立ちいかなくなる。コロナによって専門店に思いを持って絆を深め、付き合っていきたいと思われる存在にならないと淘汰(とうた)されてしまう時代に入ったのだと思います。

 石川 本気と本音で話し合えるようになることだと思います。互いに努力すべきことを指摘し合える関係でないと売り上げは伸ばせない。そのためには各自のレベルアップが必要です。最終的に商品を買われるお客様に喜ばれるという共通の目的を持つことが大事だと思います。

 花岡 私がアパレルメーカーに望むのは愛情です。仕入れ量で店の扱いが変わることがありますが、特に期中などは必要に応じて仕入れたくても、商品の魅力が薄くなって仕入れが少なくなることもあります。そうした時に「ならば次はどうしましょう」とヒアリングしてくれるメーカーとは必然的に取引が大きくなります。我々に愛情を向けてくれるメーカーは、自粛期間でも連絡を密にいただき、そうした点もメーカーの差となって表れました。

 ――コロナ終息後はどのような世界に向かうのでしょう。

 高木 服の大量廃棄の問題意識はさらに深まるのではないでしょうか。専門店とアパレル間ではブランドを超えた顧客情報や同じ商圏内の専門店間で購買行動などのデータ共有がされるようになるかもしれません。それが進むと市場での商品供給の適正規模が示され、供給過多の問題も解決すると思います。情報の持ち方やあり方をアパレル業界として考えていければよい未来につながるのだとも思います。

 村山 コロナ感染の第2、第3波があれば外出控えが度々起こるでしょう。そうなるとお出かけ着の考えはシュリンクし、カジュアル化やコンフォータブルな服が流行するかもしれません。また抗菌などの効果データが示され機能性素材の商品が見直されるかもしれません。

 IoT(モノのインターネット)が進み、5Gが一気に広がれば、先ほどのITリテラシーは年齢に関係なく高まるでしょう。ただコロナによって新たに「距離感」が問われるようになりました。人との物理的な距離は遠くなっても、ITで精神的な距離がさらに近くなります。顧客との新しい距離感を模索する。そんな時代に入るのでしょうね。

(繊研新聞本紙20年6月3日付)

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