ピクルス販売のNSW 泉州発「裏表・前後のない肌着」

2020/02/09 06:30 更新


《ローカルでいこう》NSW 泉州発「裏表・前後のない肌着」 ピクルスに次ぐ地域活性化の商品に

 主に地場野菜を使った「idsumi(いずみ)ピクルス」を販売するNSW(大阪府泉佐野市、西出喜代彦社長)は昨年、新規事業として肌着ブランド「HONESTIES」(オネスティーズ)をスタートした。「裏表・前後がない」という肌着の概念を変えたデザインが特徴だ。いずみピクルスは大阪のルクアイーレ、なんばパークスに直営店を持つほか、専門店や百貨店、ECでの販売も好調に推移。ピクルス同様に、肌着を通して繊維産地でもある泉州を活性化したいとの思いを強く持つ。

(山田太志)

 NSWの祖業は、戦前から手掛けていたワイヤロープ。4代目の西出社長が10年前に実家に戻った時、社業は厳しい状況だった。一念発起し、先代社長が少しだけ手掛けていたピクルス作りを本格化することを決めた。「おおさか地域創造ファンド」をはじめとする公的支援も受けながら、展示会に出展するなど手探りで販売を始めた。

祖業はワイヤロープの生産

■笑顔で社会貢献

 泉州名物といえば水なす漬けが有名だが、同社のピクルスは多様な野菜とフルーツを瓶詰めで販売する。保存性の高さ、個々の野菜に合わせた10種類を超える繊細な味付けなどに加え、ピクルスのイメージを変えるようなカラフルさ、「リサとガスパール」など著名キャラクターと協業したパッケージデザインがギフト用途で話題を呼び、テレビ取材も増えた。事業が軌道に乗ったことで家内工業を脱し、従業員も約30人に増えた。

 13年には、日本スチールワイヤロープからNSWに社名を変更。当初から経営理念に掲げていたのは「新しいアイデアで皆の笑顔を作り地域社会に貢献する」だった。

 泉州は繊維の一大産地であり、衣料は地域に貢献するには、うってつけの商品。裏表・前後のない肌着なら、洗濯時も着用時も快適なはず。調べてみると、「ありそうでなかった」商品だった。当初、衣料の知識は皆無。旧知の仲である、泉佐野市で「梅炭抄繊糸」などの繊維を扱う繊維商社の初嵐学さんなどに相談し、物作りを具体化していった。

「いずみピクルス」は多様な野菜とフルーツを瓶詰めしたカラフルさで人気

■海外でも販売

 特許を申請しながら、クラウドファンディング(CF)サイトのマクアケで第1弾の「裏表のない」肌着のプロジェクトを展開。昨年末には第2弾として「裏表・前後のない」新商品を提案した。目標の30万円に対し、3週間で約100万円(1月6日時点)を超える資金を集め、立ち上がりは順調だ。地域の活性化に加え、視覚障害者なども使えるユニバーサルデザインとしても貢献できると見る。価格はメンズで2500円。

 近々、金融機関のビジネスマッチングにも出展する予定だ。資金面を含めたバックアップ体制を固めながら、紳士だけでなく、子供、婦人、介護関係などに広げていくほか、アパレルメーカーとの協業も検討している。「海外にもない」との声が届いており、早期に欧州、米国などの海外販売も始める予定だ。

泉州を中心に国内で生産する
CF第2弾も順調なスタートを切った「オネスティーズ」

■妻の一声がヒント、アイデアが命/西出NSW社長の話

 本当にお恥ずかしい話ですが、東京大学文学部で学び、純文学を目指していました。村上春樹さんなどを尊敬し、何作か書きましたが、残念ながらものにはなりませんでした。その後、IT関連企業に就職。グーグル設立前後の大変化の時代です。いろんな企画やアイデアを出す仕事は本当に面白かったですね。

 ピクルス事業は、起業のために、様々な補助金などが生まれた時期だったのも幸いしました。とはいえ、ゼロからのスタート。最初は母と姉と叔母が手伝ってくれて、「この野菜はこういう味で」とか、本当に手作りで商品化していきました。ワイヤロープは1巻き100万円するのですが、ピクルスは1瓶700円。利益を出すことがいかに大変かを痛感しました。

 肌着に着目したのは、妻の一声がヒントでした。2歳と4歳の子供がいるのですが、洗濯の時に裏返すのが面倒だと。アイデアが命の商品ですから、縫製そのものはそう難しくないのですが、良い物を作るために原価率50%にはこだわりました。国産ではこの価格が精いっぱいです。

 何とかピクルスの事業も軌道に乗ってきました。先代の父親は少し前に他界しましたが、多少は安心して事業を見守ってくれているかなと思っています。

西出NSW社長

(繊研新聞本紙20年1月10日付)



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