日清紡テキスタイルはシャツ、ワーキングユニフォーム分野で、同社製品のライフサイクル(生産・使用・廃棄の全過程)での二酸化炭素(CO2)総排出量を算出・表示するカーボンフットプリント(CFP)に取り組む。シャツで先行し、23年末に青山商事とCFPを始めたことを発表。同社が原綿調達から製品までインドネシアで一貫生産する強みを生かし、精度の高い1次データを共有できる。同社はアパレルメーカーや小売業に向けて、排出量の削減に向けた施策の有効な判断材料になる点を訴求する。
(小堀真嗣)
1枚で9.6キロ
先行するのは、綿100%の形態安定加工シャツ「アポロコット」。青山商事が09年から販売し、コロナ下も堅調に売れ続けたロングセラーで昨年末までの累計販売枚数は1430万枚。販売規模が大きい分、「CO2排出量の削減効果も大きい」と見る。
両社が協力しシャツ1枚当たりの排出量を算出した。耐用年数を2年とし、その間に100回洗濯、廃棄後は焼却した場合、メンズ白シャツは9.6キロ、レディス白ブラウスは8.7キロとなった。算出方法の妥当性は、試験・検査・認証機関のSGSジャパンが検証済みという。
アパレルメーカーや小売業は、仕入れた製品のCO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)排出量のうち、自社以外のサプライチェーンの排出量に当たるスコープ3を算出する場合、従来は業界平均値や推定値といった2次データを使うことが一般的だ。
日清紡テキスタイルでは「原綿調達から紡績、織布、加工、縫製までシャツのサプライチェーンはGHG排出量を可視化しやすい」ため、精度の高い1次データを提供できる。
ユニフォームでも
インドネシアの生産拠点ではGHG排出量を重点的に削減している点も強みだ。21年下期に石炭自家発電を停止し、翌年に再生可能エネルギーを導入。22年度のインドネシアの生産拠点の排出量(スコープ1、2=自社排出と供給された電気などの間接排出)は前年度から約60%減った。
固定された2次データを使う場合、スコープ3の排出量を減らすには仕入れを減らすしかない。1次データなら、データの数値を小さくすれば、仕入れを減らさずにスコープ3の排出量を減らすことができる。同社によると、綿100%の白シャツで1次と2次データをそれぞれ使って算出したCO2排出量は、「1次データを使った方が3分の1程度少ない」という。
今後はシャツだけでなく、ワーキングユニフォームでもCFPの取り組みを広げたい考え。ワーキングユニフォームの春夏および秋冬向けの主力生地についてはCO2排出量を算出した。縫製は外注もあるため、シャツと同様に製品としての排出量を算出するには外注先との連携が課題となる。