大阪・西成製靴塾「靴の産地・西成を知って欲しい」 府立高の靴作り部を支援、共感広がる

2023/05/01 11:00 更新


大山塾長(左)と靴作り部の竹田智輝さん。「部員になる前は革靴のことはよく知らなかったが自分の好みに合ったものを作れることがとても楽しい」と話す

 革靴の産地の一つ、大阪市西成区を拠点にするインキュベーション施設の西成製靴塾。昨年11月、大阪府立西成高校に靴作り部を発足させるなど、地域社会への貢献や靴作りに携わる人材育成の活動を進めている。今春には靴の修理工場が移転してくるなど、共感が広がっている。

 創設は94年で、地場産業を継承しようと手縫いの製法を教えていたが、約2年前に運営方針を転換。創業支援と地域の活性化を主として模索するなかで昨年4月、エスペランサ靴学院の大山一哲学院長が塾長を引き継いだ。地元出身で有力靴メーカーの家に育ち、西成の皮革産業を後世に継承したい思いがある。「西成の歴史、靴の産地であることをより多くの人に知ってもらいたい。若い人たちに『靴作りって面白い』と興味を持ってもらいたい」と、縁あって靴作り部を立ち上げた。

NSCでは生徒一人ひとりの能力に合わせて制作の手順を組み立てる

 西成高は府が指定する「多様な教育実践校」の一校。23年度から「地域との連携や社会で自立する力を身に着ける学校づくり」に取り組むところだった。オリエンテーションや製靴塾でのワークショップを重ね、2年生3人の部員でスタート。大山塾長の指導の下で、毎週金曜日に活動し、今年3月には1人がブーツを、もう1人がローファーを完成させて作品展で発表した。同校で靴作り部を担当する肥下彰男教諭は「高校生でもたった半年でできるんだと驚いた。部員の1人は、西成に職人がいることを誇りに思うと話してくれ、とてもうれしかった。地場産業に携わる人の存在は、西成高の大きな強みになっていきそう」と話す。今年度は工芸の授業時間を生かし、一般の生徒にも靴作りを体験してもらう計画という。

初めてでも形にできるように段取りをサポートしている
革に曲線のステッチを入れる練習をする竹田さん

 こうした地域社会を支援する動きに共感し、協力する企業も増えてきた。靴修理の靴商店インターナショナルは、天王寺区の本社に併設していた工場を移転し、4月1日から建物の半分を共有して修理業務を行っている。「業務用の本格的な機材が揃ったので物作りの幅が広がる。作品制作だけでなく、現場の物作りと職人に接することができるのは、刺激を受ける機会になるはず」と大山塾長。靴作り部は生徒の自主性を尊重しており、「本人に意欲があればインターンシップやアルバイトも可能だし、靴作りで食べていきたいとなれば、エスペランサ靴学院で学ぶ道も紹介できる」。

4月から靴の修理工場が入居し、現場の第一線を体感できる場となった

 西成製靴塾では、新たな事業として、靴作りに携わる人材と靴を作りたい企業やブランドをつなぐマッチングサイトを始動する予定。「様々な人や企業が集まり、化学反応が起きる場にしていきたい」。

(須田渉美)



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