【新年特別号】平成のキーワード サステイナブル

2019/01/27 06:30 更新


 平成の時代の終盤に、サステイナブル(持続可能性)という言葉が浸透し始めた。きっかけは15年の国連総会で採択されたSGDs(持続可能な開発目標)だろう。同年は気候変動枠組み条約「パリ協定」が締結された年でもある。

〝透明〟が前提に

 企業の社会貢献を意味するCSRは以前から取り組まれてきた。サステイナビリティーやSDGsは、個々の企業による社会貢献も含まれるが、それ以上に広い概念を持つ。働く人の平等や成長、ダイバーシティー(多様性)確保、地域との共生、取引先とのフェアな関係、地球環境の保全、若い才能への支援、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)との連携など、ステークホルダーすべてと将来にわたって持続可能な関係を築くことを差す。

 ファッション産業は、原料から製品になり、店舗や消費者に届くまで、長く複雑なサプライチェーンが構築されている。サステイナブルなサプライチェーンは透明であることが前提となる。だが、90年代に入ってから生産コストの安い海外へと拠点がシフトし、サプライチェーンの隅々にまで目を配ることが難しくなった。

 13年4月24日、バングラデシュ・ダッカ近郊にある縫製工場が入居していた商業ビル「ラナ・プラザ」が倒壊し、1100人を超える死者を出した。〝ファストファッションの裏側〟として注目されたこの事故は、コストを追求するあまり、働く人の安全が後手に回ったことが引き起こした悲劇だ。事故後には国際的な団体やNGOなどにより、バングラデシュの縫製工場の安全のための国際合意が創設され、消費者はSNSを通じてファッション業界の在り方を問うキャンペーンを展開した。各国のファッションウィークでもエシカル(倫理的)を切り口としたイベントや展示会が催されるようになった。

欧米企業がリード

 欧米の企業やNPOが主導し、社会や環境への負荷を軽減しようと、SAC(サステイナブル・アパレル連合)やテキスタイルエクスチェンジなど、国際的なイニシアチブ、フェアトレード(公正取引)、オーガニック認証などへの参画が増えた。日本企業は遅れを取ったが、グローバルで事業を行う企業を中心に、国際的なイニシアチブや認証に参画する企業が出始めている。

 CSR調達基準の策定や、サプライヤー(工場)リストの公開へと踏み出す企業もある。作った物のその後の責任も問われ始めている。服の焼却処分への批判も起こった。ファッション産業だけでなく、食品の大量廃棄や海洋プラスチック汚染など、廃棄物は世界的な課題だ。AI(人工知能)を活用した需要予測や、パーソナル対応のためのスマートファクトリー化などが進んでいる。ビジネスを効率化するだけでなく、無駄のない物作りという点でサステイナビリティーにつながる。

 数々の課題への対応をコストととらえるか、企業やブランド力を向上させるチャンスととらえるか。企業や消費者から選ばれ、未来にわたって事業を持続可能にするための経営のかじ取りが問われている。

(繊研新聞本紙1月1日付)



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