今年も猛暑や残暑で、長い夏への対応がアパレルで課題となった。ここ数年の夏は、気候変動による長期化する夏と消費者の実需買い傾向への取り組みが急がれた。総合アパレル各社はシーズンや商品のMD見直しを強めたが、9月は秋物の動きが鈍く前年割れの企業も。10月は中旬からアウターが動いたが伸び悩み、まだまだ不確実な点が多かった。
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1年の40%が夏日
気象庁によると、25年夏(6~8月)の日本国内の全国平均が平年より2.36度高く、統計史上最高を更新。特に7月の平均気温は統計開始以来最も高く、8月も過去2番目の高さとなった。秋(9~11月)も平年より1.37度高かった。
東京では、夏日(25度以上)が146日、真夏日(30度以上)88日、猛暑日(35度以上)は過去最高の29日で、夏日が1年の40%を占めた。全国的にも秋に30度を超える日が見られるなど、以前のような8月から秋物やコートなどアウターを売り場で見せながら、購買を促すMDが通用しなくなっている。
オンワード樫山は、シーズンMD改革に乗り出し、シーズンレス商品を拡充した。「23区」は、長い夏にシアー素材のトップやジレなどレイヤードアイテムを強化。サマーニットの商品を約3倍にするなど、バリエーションを増やした。
中軽衣料の強化は各社も同じで、ほかにもブラウスやショート丈アウターなどを拡充、気温が下がればレイヤードで着こなせる提案を増やした。また、秋冬物に比べて夏物の商品単価が低いこともあり、セット買いを促した。
季節のくくり変え
三陽商会は24年から、以前の「四季」から、夏を初夏・盛夏(5~7月)と猛暑(8、9月)に分けた「五季」として、実際の気温に合った商品を適時販売するように切り替えた。猛暑期では、「秋色×夏素材」を基軸にトップの6割強を半袖~七分袖丈に、ジャケットの8割を洗える仕様にするなど残暑対応を徹底。夏物新商品を売り場に投入し成果があったものの、投入商品によって正価販売不振も見られた。
ワールドは、「暑秋」を新設。シャツ・ブラウスの袖丈を五分から七分、長袖へ気温に合わせて切り替えた。また、秋色プルオーバーやカーディガンなど新作が動いたが、「まだまだ企画精度が低かった」と、9月は前年を下回った。「今の長い夏が当たり前として、シーズンや商品MDの再構築は必須」だが、これまでの慣習的なMDからの再構築は道半ばで、26年に向けて大きな課題となっている。
(繊研新聞本紙25年12月10日付)
