【ニュース2021①】広がる持続可能性への取り組み トレーサビリティーの重要度増す

2021/12/29 06:30 更新


 21年は繊維・ファッション産業のサステイナビリティー(持続可能性)実現に向けた活動が一気に活性化した。業界の複雑なサプライチェーンの構造改革を、新しい業界団体設立などの企業間連携を通じて推進する。

産業構造の転換目指す

 「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」(JSFA)は11月、第1回総会を都内で開催。「2050年に向けて繊維・ファッション産業の構造転換を推進し、ファッションロスゼロとカーボンニュートラルを達成する」とした活動目標を確認した。共同代表には伊藤忠商事とゴールドウイン、日本環境設計が就き、パブリックパートナーに環境省、消費者庁、経済産業省が参加する。

 JSFAの発足は、20年12月~21年2月に環境省の「ファッションと環境」タスクフォースが勉強会を開催したことが契機となった。行政や企業の取り組み状況・課題を共有する中で「個々の企業では限界があり、業界を横断して解決策を導く必要性」への認識が広がった。勉強会に参加した企業が呼びかけて、企業連携のプラットフォームとして同アライアンスの設立に至った。

 今後、JSFAは持続可能なファッションに関する知見の共有や、生活者との双方向のコミュニケーション、国内外の重要動向の先行把握、業界内の共通課題の改善のために必要な政策提言などを行う。

持続可能なファッションに関する知見の共有や業界内の共通課題の改善のために必要な政策提言などを行う(JSFA)

情報伝達のハブに

 環境や社会に配慮したサステイナブルな綿花生産や綿製品の製造を目指す「日本サステナブル・コットン・イニシアチブ」(JSCI)は今年5月に発足。同イニシアチブは、日本企業や消費者に対して持続可能なコットンへの理解拡大と利用促進を目指す。推進母体は、テキスタイル・エクスチェンジ、フェアトレード・ラベル・ジャパン、ソリダリダード・ジャパン、日本サステナブル・ラベル協会、持続可能なサプライチェーン研究所。コットンを使用するブランドや小売業、商社、製造企業、コットンに関連する組織や団体、コットンのサプライチェーンの環境・社会課題に関心のあるNGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)、その他関心のある企業や組織、個人を対象に活動する。同イニシアチブが情報伝達のハブとなり、サステイナビリティーへの取り組みが加速することが期待されている。業界でサステイナビリティーへの関心が高まるのに伴い、トレーサビリティー(履歴管理)への注目度が増加。昨今、オーガニックコットンの偽装発覚や新疆綿を巡る懸念の高まり、リサイクル素材の不使用などの事案が発生し、重要性が改めて意識されるようになった。

 第三者認証の活用が進むほか、素材メーカーや商社自らトレーサビリティーを確保する仕組みも工夫されつつある。また、透明性を担保するためのテクノロジーの進化も重要で、将来的にはブロックチェーン技術の導入が期待されている。

(繊研新聞本紙21年12月17日付)



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