大都市に集中する商業施設
16年もSCの開業が活発だった。日本ショッピングセンター協会によると、16年は54施設が開業、国内のSC総数(速報値)は3212施設(15年は3195施設)に達した。年間開業数は4年連続で50施設を超えた。
「コト」提案を重視
その中で目立ったのが郊外・都市近郊の広域型SC(RSC)だけでなく、駅前を含めた大都市中心部での大型施設の開業だ。16年は春に、ルミネがJR新宿駅新南口にできたJR東日本の大型複合施設内と駅構内に「ニュウマン」、東急不動産が東京・銀座5丁目に「東急プラザ銀座」を開業。名古屋駅前では三菱地所が大型複合施設「大名古屋ビルヂング」を春に、日本郵便が「キッテ名古屋」を夏に出した。日本郵便は博多駅前に博多マルイが核店舗の「キッテ博多」を春に開業した。
多くの施設がセレクトショップや海外ブランドを軸にした高感度なファッション、飲食・食物販店を揃えると同時に、共用部の充実や文化・アートなどを発信する施設の導入などによって「コト」提案を重視した。ニュウマンは直営の多目的ホールを入れ、東急プラザ銀座は音楽などのイベントができる共用ラウンジを設けた。ECの浸透や施設間競争の激化の中で、MDで新しさを出すだけでなく、「買い物以外での価値」も出さなければ、客から支持されなくなったためだ。
今後も同様の傾向が続く。17年は東京・銀座6丁目の松坂屋銀座店跡地にJ・フロントリテイリング、森ビルなど4社が大型複合施設「ギンザ・シックス」、JR東海高島屋が名古屋駅のJRゲートタワーに「タカシマヤゲートタワーモール」を春に開業。秋には松坂屋上野店南館が新しい大型複合施設となり、パルコが新施設を出す。20年の東京夏季五輪・パラリンピック開催を控え、渋谷や品川、虎ノ門、日本橋、横浜など首都圏での大型複合開発が相次ぐ。来街者、就業者がさらに増え、大都市中心部への人口集中の加速が予想される。
![都市型新施設の多くは「快適に買い物できる環境」を整備(ニュウマン)](http://d23ihmxbfvktwx.cloudfront.net/uploads/2016/12/fca333b0971a2f40575d46968917d9b4.jpg)
地方は苦戦、撤退も
一方で、地方や、駅から離れた中心市街地の施設の多くが苦戦し、撤退する動きも増えてきた。大都市中心部への人口集中や周辺のRSCへの顧客流出などが背景だ。パルコは16年11月末に千葉パルコを閉店し、17年8月末に大津パルコの営業を終了する。構造改革を進める百貨店の地方・郊外店の閉鎖も相次ぐ。そごう・西武は16年に西武春日部店、同旭川店など3店を閉鎖、17年2月に同八尾、筑波店も閉める。三越伊勢丹は17年3月に三越多摩センター店、千葉パルコに近い中心市街地の三越千葉店を閉鎖する。
大都市中心部では駅ビルを中心に大型改装も続く。郊外・都市近郊では子育てファミリーを中心に人口増が見込まれる地域へのRSCの開業が今後も相次ぐ。低迷する地方や中心市街地の立て直しが大きな課題だ。=おわり