新型コロナウイルスの影響がベトナムでも出ている。ベトナムは中国に次ぐアパレルの縫製拠点。中国からの振り替え生産の要望が相次いでいるが、「そう簡単にできる話ではない」という見方もあり、秋冬物の生産・納期が遅れる可能性も出ている。
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ベトナムに進出している副資材メーカーや問屋によると、振り替え生産に伴う依頼が増えている。ただ、副資材の原材料は中国から輸入していることが多く、「テト(ベトナムの旧正月)休暇前に手配していた在庫が切れる4月以降はどうなるかわからない」(各社)という。YKKベトナムは南部ホーチミン周辺と昨年ハノイ郊外に建設した新工場があるが、原料からの一貫生産によって「フル稼働している」。
縫製工場では中国からの生地や原材料の調達で相当苦労しており、在庫を前倒しで使っている状況だ。中国系の工場では、中国人の技術責任者がベトナムに戻って来られていないところもある。振り替えの要望に応じられるだけの生産能力は限定的で、特に凝ったデザインや、ロットの小さい日系向けは断られることも多いという。
原材料の調達が見通せないなか、秋冬物についても納期遅れが懸念されている。グローバル大手SPA(製造小売業)などの欧米向け秋冬物の生産開始が遅れ、日本向けと生産時期が重なり、工場のキャパシティーを超える恐れがある。
チャイナリスクが浮き彫りになったことで、中長期的には「今後もベトナムを中心とした東南アジアシフトが加速する」見方が強い。
ベトナムで確認された感染者数は少ないが、街中では日本以上の警戒態勢が敷かれている。大きなビルでは入館前に体温チェックがあったり、マスクを配布している。30度を超える気温でも、ベトナム人の半数近くはマスクを着用して過ごしている。
(ホーチミン=藤川友樹)