三起商行 労働相談アプリ導入第1号 工員の声を日常的に吸い上げ

2021/01/04 06:29 更新


アプリを通じて直接ASSCに相談できる ©2020 The Global Alliance for Sustainable Supply Chain

 三起商行は、労働相談アプリケーション「ゲンバワイズ」の導入第1号企業となり、自社サプライチェーンの国内縫製工場に登録を促している。アプリはNGO(非政府組織)ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)が開発した。労働者が働く中で生じる悩みを、アプリを通じて直接ASSCに相談できる。工員の声を日常的に吸い上げ、三起商行と工場が共に課題を認識し、解決できる仕組みを整える。

 こうした問題解決に、同社が本格的に動き始めたのは17年。ミキハウストレードの委託先のミャンマー工場で、労働者の権利侵害、劣悪な労働環境が国際人権NGOから指摘されたことがきっかけだ。第三者機関の報告書を公開した後、グループのCSR(企業の社会的責任)調達ガイドラインを策定。サプライヤー説明会を実施して方針を共有するなど、改善に努めた。

 その後、人権デューディリジェンス(人権尊重に向けた取り組み)を進める中で、国内工場の外国人技能実習生問題を最優先課題に掲げた。日本製子供服の安心、安全の価値をうたう同社にとって、ブランド毀損(きそん)につながる問題だからだ。外国人技能実習生を雇用する工場を特定するためにアンケートを実施。18年2月から、全25社をASSCの担当者と共に1年半かけて視察した。経営者への聞き取りや帳票の確認、技能実習生へのインタビューなどを行い、衛生環境の改善や危険物の管理など一定の成果が得られた。その上で、「予備監査をベースにするのでなく、日常的に従業員の声を拾い上げる仕組みが必要」(上田泰三企画本部品質管理部部長)として、ゲンバワイズの導入を決めた。

 20年1月に開催したCSR調達説明会には、サプライヤー75社が参加。ほとんどの工場からアプリ導入の同意書を取得した(運用コストは三起商行が負担)。本来は工場を直接訪問してアプリの説明会を実施する予定だったが、コロナ下で地方に出向けず、登録したのは4工場で、ユーザーも56人とまだ少ない。ゆくゆくは各地の説明会で理解を広め、「物作りを向上していく前向きなツールになれば」と考えている。

 外国人技能実習生問題は様々な要素が絡み、一企業での解決は難しい。最初に多額の借金を抱えて来日するという大きな問題があり、「行政主導、官民連携の取り組みで送り出し機関や管理団体のホワイトリスト化」を望む。同社と工場との連携では、アプリ活用やCSR調達説明会の実施で、世界的な潮流や正しい認識の共有を進める。同社単独では、「高付加価値のものをしっかり売っていくことで、サプライチェーンに還元する」(平野芳紀企画本部執行役員統括部長)ことを全うする。

平野企画本部執行役員統括部長(左)と上田企画本部品質管理部部長


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