メトロポリタン美術館のコスチュームインスティテュートで、「眠れる森の美女たち:眠りから覚めたファッション」展が始まった。自然を共通項とする220点の服とアクセサリーを、はかなさともろさを一つの主軸に見せる一方で、新しいテクノロジーを取り入れた体験型の展示にしている。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
超極細の糸で織った1887年のグリーンのシルクサテンのロングドレスは、生地と色の特性から元の状態で残っているのは一部のみで、もろい衣服を手にすることには限界があると説明している。つまり、「眠れる森の美女」のタイトルは、普段は人目につかない場所に所蔵している「眠っているはかない服」を見せる(再び目覚めさせる)ことに由来している。
高橋盾の「アンダーカバー」が24年春夏コレクションで見せた、透けるレジンの中に3Dのピンクのバラを浮かび上がらせたドレスをカタログの表紙に使ったのも、コレクションのタイトル「ディープ・ミスト」が「薄れゆく記憶」を参照にしたものだからのようだ。
今のトレンドに合わせて再解釈して紹介した古い服もある。1765年の英国製花柄のドレスはいろいろな布地をはぎ合わせていて、昨今のサステイナビリティー志向のデザイナーにインスピレーションを与えるだろうと提言している。ただし、このドレスは非常に精巧で美しく、何枚もの布地をはぎ合わせてあると言われなければわからないほど完成度が高い。