大阪服装縫製工業組合が工賃適正化などを訴え 経産省の太田副大臣らと面談

2023/08/03 06:27 更新


大阪服装縫製工業組合の井上理事長ら(写真右側)の意見に答える経産省の太田副大臣(同左上)

 大阪服装縫製工業組合はこのほど、経済産業省の太田房江副大臣らと面談し、縫製業が抱える課題を訴えた。面談時間は予定していた30分を大幅に越え、1時間近く意見交換が行われた。

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見積もりをとって!

 同組合から井上美明理事長(アーバン社長)、只石英二事務局長、モデリアの平尾鉄兵社長と、日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の松尾憲久副理事長(マツオインターナショナル社長)も出席した。経産省からは太田副大臣、細川洋一近畿経済産業局産業部長、田上博道製造産業局生活製品課長ら。同組合からアパレル企業に対する工賃の適正化を訴えたほか、現行の外国人技能実習制度に関する問題点が指摘され、縫製業の実態に即して同制度の見直し議論を進めるよう求めた。

 冒頭で、井上理事長は技能実習生に関わる違法行為(最低賃金や割り増し賃金などの不払い、違法な時間外労働など)に触れ、「技能実習生に関する違法行為がなぜなくならないのか。それははっきり言って工賃が安すぎるからだ」と訴えた。18年に運営が始まった適正加工賃算定システム「ACCT」の利用推進が呼びかけられてきたが、「改善が進んでいない」と指摘。「少なくとも見積もりをとってほしい」と訴え、「その上での価格交渉ならいいが、そのプロセスを経ていないまま違法行為があったのなら、我々はアパレル企業も違法行為に加担していると思わざるを得ない」と述べた。

 平尾氏は、「仕事は必ず見積もりがあった上で受発注が成り立ち、仕事依頼を受けるというのが通常のはず。縫製についてはアパレル企業が決めた小売価格に対してコストが決まっていく」と強調。「コストは小売価格の20%前後。そこから生地代、付属品代が引かれ、残りは縫製工賃しかなく、そこで調整するしかない」と実態を説明した。

 縫製業の人手不足にも言及。「日本人の若者がこの業界になかなか勤めようとしない。専門学校に入学の時点では学生の2、3割が縫製の仕事をしたいという。卒業の時点では3%まで減る」という。一番の要因は給料水準の低さとし、「縫製職人の平均給料はだいたい年間で250万~260万円。そんな業界に人が来るわけがない。日本人はなかなか働こうと思わないだろうし、私も自分の子供に勧められない。それが後継者問題にもつながっている」と指摘した。「この状況をどうやったら変えられるのか。企業レベルではずっと努力を続けているが、打開策が見えない」と心境を語った。

人手不足の工程に人材を

 只石事務局長は外国人技能実習制度の問題点を五つ説明。①技能実習生が稼げるように残業の上限時間を日本人と同等まで延長すること②裁断や二次加工、仕上げなど縫製業を取り巻く工程にも配慮した対象職種の撤廃あるいは緩和③実習生の入出国費用の企業負担について条件を設けること④技能実習2号の修了予定者を対象とした評価試験の対象者を同3号への移行希望者のみにすること⑤入国前講習の短期化を求めた。

 技能実習2号へ移行可能な対象職種・作業の見直しについては、現行制度は繊維・衣服関係で13職種、22作業あるが、衣服の縫製に関わるのは「〝婦人子供服製造〟と〝紳士服製造〟くらい」と指摘。「縫製業の多くは裁断やボタンホール、刺繍などの二次加工、プレス、検品などを専業でやっている人たちに支えてもらっている。こうした専業さんは人手不足で困っているのに、技能実習生を活用できない」という。「現行制度は裁断から出荷まで全て一気通貫で対応できる縫製工場を念頭に置いた制度だと思う。でもそんな工場は日本に2割もないだろう」と話した。

 この訴えに対して太田経産省副大臣は「これはやらないといけない」と理解を示した。また、同制度自体についても「(制度自体が)形骸化してしまい、本末転倒の制度になっているのは明らか」と感想を述べた。コロナ下でマスクや防護ガウンの供給を支えた事例も踏まえ、「安全保障の観点でも日本の繊維産業の位置付けをきちっと議論しないといけない」とコメント。田上生活製品課長も「パンデミック(世界的大流行)の際に、繊維産業の皆さんには助けていただいた。国内の物作りを残していくため、しっかり考えていきたい」と応えた。

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