経済産業省は2月10日、西村康稔経産相と賃上げに積極的な企業経営者との意見交換会を初めて開いた。参加したのは大手企業7社で、ファッションビジネス企業では三起商行の木村皓一社長が出席した。
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冒頭で、西村経産相は「これまでアベノミクスで成長戦略を進めてきたが、全体として所得の向上はできなかった。今後は賃上げによって企業が優秀な人材を集め、それがイノベーションを生み出し、さらに賃上げにつながる好循環を促したい。政府も思い切った支援をする」などと発言した。その後、各社が賃上げの取り組みと背景などを報告した。
三起商行は昨年7月から正社員の賃金を平均12%(定期昇給2%、ベースアップ10%)引き上げ、昨年10月からパート・アルバイトの時給も約10~12%上げた。さらに、今年4月入社の新入社員の初任給を従来の月20万5000円から25万円に上げる。木村社長はその理由について、「当社は全社売り上げの約55%が海外で、正社員510人のうち、50人が外国籍。外国人を含め、優秀な人材を確保するためには給与水準の引き上げが必要」と説明した。さらに、「賃上げの原資として、メイド・イン・ジャパンによる当社製品の付加価値をより高め、海外に比べてほぼ半値だった日本での販売価格を大幅に上げた。取引先工場の工賃も上げ、安定稼働につなげた。付加価値と価格の見直しを徹底してやらないと経済は伸びない」と強調した。初任給25万円は「国際水準を考えるとまだ低い。30万円くらいが適当」という。
意見交換会は「エネルギー価格や物価が上昇する中で、重要性が増している賃上げの機運を産業界全体として高め、政策に反映させる」(島津裕紀経済産業政策局産業人材課長)ため、実施した。「2月下旬には中小企業との会合も検討する」(西村経産相)という。