実需を捉えるのは難しい。「寒波の影響で春物の動きは鈍い。店頭は明るい色目の〝春カラー〟商品が並んでいるが、この寒さでは目に入らない」とある百貨店の婦人服担当者。昨年9月も同じようなことがあった。長い夏を想定し、秋色夏素材商品を強化したところ、秋色よりも「夏の元気カラーの反応が良かった」とのこと。いずれも季節先取りの気分になれない気温だった、ということだろう。
振り返れば1月商戦の実需も複雑だった。「プロパー好調、セール低調」の傾向は年々強くなっており、先の百貨店もプロパーが売上高の過半を占めた。プロパーの内訳には、インポートブランドのダウンコートなど冬物のセール除外品に加え、ワンピースやブラウスなどオケージョン対応の目的買いや春物の先物買いが含まれている。
一方で、セールニーズも根強くある。コートなど冬物セール品の目的買いは、セール開始当初の「オフ率」の少なさから購入に至らない事例が多かったようだ。1月中旬以降の再値下げやバンドル販売でセール品の動きが良くなったと複数のファッションビルが指摘していた。セール目的客の求めるオフ率とのズレがうかがえる商戦だった。
気候変動と物価高による生活費の上昇は、多くの消費者の購買行動を変えている。「誰に、何を、どのように」の組み直しが求められている。