26年春夏欧州ファッションウィークは、特別なデビューショーが相次いだ。各コングロマリットの主力となる約10のブランドが、新ディレクターによる新作を発表した。ブランドの歴史を研究し、自身のスタイルを織り交ぜる作業は思いが詰まって重くなることも少なくないが、あくまでもさりげなく軽やかな表現が目立った。
なかでも光ったのはジョナサン・アンダーソンによる新生「ディオール」。シグネチャーの「バー」ジャケットをはじめとする彫刻のようなフォルムを、現代の女性のファッションに見事にシンクロさせた。6月のメンズのデビューショーも好評で、シーズン前から話題となるなか、しなやかにブランド刷新を遂げた。
マチュー・ブレイジーによる「シャネル」も、さりげなく美しい変身となった。ツイードのジャケットというクラシックな代表作を、絶妙なバランス変化でモダンに表現した。「ボッテガ・ヴェネタ」時代にも大切にしていたファッションを楽しむ心のような余裕すら感じた。
いずれも別格のメゾンだけに、プレッシャーは相当なものだっただろう。SNSをチェックすると、ショーを無事に終えたアンダーソンの目には涙がにじんでいた。
新ディレクターによって、想像以上に軽やかな変化を遂げたファッションウィーク。次は、市場にどのようなスパイスを与えるかが注目される。