ファッション・ビジネスという言葉が日本に登場して57年。筆者が翻訳・出版した『ファッション・ビジネスの世界』(1968年、東洋経済新報社)の原題〝Inside the Fashion Business〟の邦訳で大議論の結果、ファッション・ビジネスという〝新しい日本語〟が誕生しました。
(IFIビジネススクール元学長 尾原容子)
留学先のニューヨーク(NY)のFITで、「目からうろこ」の衝撃を受けたこの本が説く米国の先端的ファッション・ビジネス(FB)を、日本にぜひ紹介したいと考えたのが1966年。以来60年間で日本のFBは目覚ましい成長を遂げ、世界をリードするデザイナーも登場しました。しかし今、かつてトップファッションやラグジュアリーに憧れた消費者が、580円の冷感Tシャツに価値を見いだし、100万枚を売り上げる時代になっています。
FBはどう発展し、変化してきたのか? 誕生から今日までの軌跡を再考し、未来をどう創造すべきかを探りたい。というのが、この「寄稿」の目的です。

きっかけは今春、母校FITの記念ガラ・イベントの一環で講演した際、「日本のFBの母、尾原蓉子が語るオーラル・ヒストリー(口述歴史)」が同校図書館のアーカイブに収録されたことです。感激したのは、筆者が「FIT卒業生で最も成功した一人。デザイナーでもなく、社長になったわけでもないが、FBのために市場を作り、産業を作った」とたたえられたことでした。
伝統的なきものの世界から、洋服で劇的な発展を遂げた日本のファッション産業をFITは高く評価しています。その原動力は、日本の繊維ファッション産業発展へ貢献を惜しまなかった人々、旭化成や日本のファッション業界のリーダーたちの熱意でした。
この記事は有料会員限定記事です。繊研電子版をご契約いただくと続きを読むことができます。
すべての記事が読み放題の「繊研電子版」
単体プランならご契約当月末まで無料!
