先月、ピアニストのフジコ・ヘミングさんが亡くなった。幼少期には第2次世界大戦による学童疎開を経験し、10代後半に聴力の一部を失う苦労を重ねながら、欧州と日本でピアニストとして名声を得た。
偉大な先人に続くように、今、国際的に活躍する日本人ピアニストはたくさんいる。ハンディキャップを持ちながら才能を開花させた辻井伸行さん、ショパン国際ピアノコンクールで第2位となり著名となった反田恭平さん、東京大学理科一類で学んだという異色の経歴の角野隼斗さんなど枚挙にいとまがない。
クラシック音楽やバレエなどの文化にとって、歴史や伝統が重要な意味合いを持つ。これらの分野だと、やはり欧州のコンクールでの受賞歴が世界的な知名度を高めるきっかけとなる。
ファッションデザインの分野でもコンテストをきっかけに著名になるデザイナーは多い。かつて、IWS(国際羊毛事務局=現ザ・ウールマーク・カンパニー)主催のコンテストでイヴ・サンローランとカール・ラガーフェルドが同じ年に1位を受賞したのは有名な話だ。現在では、LVMH主催のコンテストや南仏イエールのコンテストが著名なところ。音楽でもファッションでも、新しい才能の登場は常に待ち望まれている。クラシック界のように世界で活躍する、日本の若手有望株の更なる出現に期待したい。