《めてみみ》風評被害対策

2023/08/31 06:24 更新


 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を巡り、最も懸念されていた「風評被害」が早くも広がっている。中国政府は処理水の放出が始まった8月24日に日本の水産物の全面禁輸を発表、その後中国からの日本への嫌がらせ電話が相次ぎ、中国で日本製品の不買運動も起こっている。

 政府や東電によると、処理水は国際的な基準を超える安全性を確保しているという。放出開始後も安全性を示す「科学的根拠」をデータで公表している。にもかかわらず、中国政府が処理水を「核汚染水」とし、反発しているのは政治的な思惑が大きいようだ。何よりも、中国で安全性を示す「科学的根拠」が十分に伝わっていないと思われる点が懸念される。

 中国政府との問題の解決は日本政府の外交に期待するしかない。ただし、中国の人々全てが処理水を「核汚染水」と思っているわけではないし、日本の水産物を食べたいと思う人々も多いはずだ。そうした人々へのアプローチを民間レベルでも進める必要がある。

 中国からの日本への団体旅行が解禁され、今後の動向が懸念されるとはいえ、訪日中国人観光客は増えている。こうした人たちが水産物以外を含めた日本の「良さ」を体感し、中国に広げてもらうことを期待したい。SNS時代だからこそ、民間レベルでもその流れを後押しすることはできる。



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