《めてみみ》20年分の遅れ

2023/04/18 06:24 更新


 中国12.1倍、ベトナム8.2倍、バングラデシュ6.3倍、カンボジア6.1倍、インドネシア5.6倍、ミャンマー9.4倍、タイ3.8倍、インド6.1倍。21年のGDP(国内総生産)が20年前と比べどれだけ成長したかを列記するとこうなる。

 日本は市場に流通する服の9割強をこれらの国から輸入している。ちなみに日本のGDPの過去20年の伸びは2割弱。GDP世界2位の中国をはじめ、主要輸入相手国は軒並み日本を凌駕(りょうが)する速度で成長を続けている。

 目先の円安だけでなく、彼我の経済成長力の差は今後、服の調達コストをさらに押し上げる。輸入浸透率が98%を超え、生産基盤が事実上空洞化した日本で、全面的な国内生産回帰は現実的なシナリオではない。

 服の小売価格は上昇した分のコストを転嫁しないと利益が出ない状況になっている。企業による人件費引き上げの動きも広がっているが、現時点では物価上昇率を下回る水準にとどまっており、単純な値上げでは服を買わなくなる生活者が増えるだけだろう。

 値上げが通る価値を持つ服を作る、回復の兆しがあるインバウンド(訪日外国人)を狙う、海外市場に活路を見いだす…いくつかできることはあるが、20年分の遅れを一気に挽回(ばんかい)することは難しい。企業も個人も、できることから工夫と努力を積み重ねるしかない。



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