京都を訪れる楽しみの一つは老舗の名店での買い物だろう。さばずしは八坂神社前、七味唐辛子は北野天満宮近く、豆腐なら嵯峨野のあの店と、それぞれにお気に入りの店がある。最近はSNSなどで情報が拡散し、意外な行列ができることも増えたが、老舗らしい情緒は変わらない。
規模を広げたり、多角化することも少なく、昔ながらの場所で堅実な商売を続けていく。善しあしは別にして、希少価値を売りにしながら堅実に息長く商売を続けていくこと。右肩上がりの成長が見込みにくい日本経済が学ぶべき点は多い。
錦市場や四条通りなどには、国内外の観光客が少しずつ戻ってきたが、まだまだ経営の厳しい中小企業は多い。コロナ禍で行われた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」も、期間を3年とすれば、今年の半ばから来年にかけて返済期日を迎えることになる。新たな借換保証制度なども新設されているが、原料高、物価高をはじめ、3年前よりも企業を取り巻く環境は厳しさを増した感。再成長や新たな返済計画へのハードルは高い。
「京都でもこの間、廃業・縮小した企業は少なくない。団体と金融機関の間に立つ仕事も日々増えてきた」と言うのは京都商工会議所の塚本能交会頭。様々な栄枯盛衰を乗り越えてきた古都ならではの知恵を結集し、難局を乗り越えたい。