23~24年秋冬パリ・メンズファッションウィーク期間中、フランス全土でストライキが行われた。年金改革に反対する労働組合の呼びかけで、陸・空ともに行う大掛かりなものだった。パリの地下鉄でも、自動運転が導入されている2路線を除いた全てが一日中、動かなかった。
ショー会場を移動するジャーナリストやバイヤーは、ハイヤーの手配や貸自転車のアプリをダウンロードするなど対応に追われた。これまでも、しばしばファッションウィーク期間にストはあった。むしろ、世界から人が集まるこの時期にストを行うことで、自分たちの抱える問題をよりアピールできる。パリやミラノの労働者たちにはそんな狙いもあるだろう。
賃金水準が30年来、変わらない国。いつの間にか日本はそんな国になってしまった。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の賃金水準は最下位グループにある。アベノミクス以前は世界5位であった日本は今や24位へと転落、フランスよりも韓国よりも下位だ。
エネルギーや原料の高騰により物価高が懸念されているが、問題は日本の賃金水準が上がっていないことにある。ファッションウィーク中のストライキに困惑しながらも、従順で声を上げないままの国と異なり、したたかに権利を主張するフランスの国民性に頼もしさも感じた。