《めてみみ》個でつながる

2022/11/22 06:24 更新


 新型コロナの水際対策が大幅に緩和され、百貨店のインバウンド(訪日外国人)需要が急浮上している。11月の累計免税売上高は、高島屋が前年同月比4倍、大丸松坂屋百貨店が6倍だ。円安効果が重なり、ラグジュアリーブランドや時計など高額品を買い求める個人旅行客が急増した。

 突出するのが伊勢丹新宿本店で「11月の免税売上高は、ピークだった18年度とほぼ同じ水準まで戻った」という。香港、韓国、台湾など東アジアの顧客が「ここにしかない商品を目的買い」(同店)し、限定・先行品の売れ行きが良い。

 三越伊勢丹ホールディングスは22年度の免税売上高は220億円を見込む。ピークだった18年度の760億円の約3割の水準だ。インバウンドの復調は都心店に限られ、地方店への波及は見られない。最大の課題は中国からの訪日客の消費が戻っていない点だ。

 中国政府は当面、海外への渡航を制限し、国内の消費回復を最優先すると想定される。コロナ前への完全復活は23年度以降となる見通しだ。一方で受け入れ態勢の整備を急ぐ。免税カウンターの拡張のほか、訪日客向けの優待クーポンの導入が相次ぐ。三越伊勢丹は海外の富裕層からのニーズを掘り起こそうと、10月に海外外商の専門チームを立ち上げた。当面は「中国以外の顧客と個でつながる」戦略を強める考えだ。



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